■五月十九日


昼休み、もしかしたらと思い仕出しを断って昼食を摂らずにいたが、沢田は来なかった。
なんだか僕らしくもなく、一日中気が気ではなかった。
だから、放課後やってきた彼がいつも通りの様子だったのに、とてもほっとしたのだった。
「お弁当箱洗って返すなんて、とても礼儀ただしい子だって、母さん褒めてましたよ」
彼はまるで自分が褒められでもしたかのように、嬉しそうだった。
「でも、ヒバリさんの都合も聞かずに突然持ってきちゃって、すみません。迷惑でしたよね」
「・・・美味しかったよ」
自分でも、気の利かない言葉だとは思う。しかし本当に、なんと答えたら分からなかったのだ。
続く言葉を考えていると、ふと思いついた。
「あの店、月曜が定休日なんだ」
沢田が顔を上げて僕を見る。
嘘ではない。ただ定休日でも、僕の分だけは特別に作らせていたけれど。
「じゃあ、月曜日にまた、持ってきます!」
「うん」
不思議だ。沢田の嬉しそうな顔を見ていると、こっちまで月曜日が待ち遠しく感じられる。
赤ん坊はそれが大空の特性みたいな事を言っていたけれど、そういうことなのだろうか。他の奴等も、彼を見てこんな気持ちになっているのだろうか。

もしそうだとしたら、僕は、
この子を誰にも見せたくはない。



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