■五月十七日


最近の沢田はよく喋る。
草食動物のお喋りは嫌いだが、仕事中は大人しく座っているので、まあ良い。
だが、問題は・・・。
「今日の体育、ソフトボールだったんですけど、山本凄かったんですよ〜」
「獄寺君、母さんの卵焼きが好きなんで、お弁当に入ってたときは一つあげるんです。すごーく幸せそうな顔をするから、なんかおかしくって!」
何故群れが嫌いだと公言している僕に、そういう話をするんだ。
そういうのは、君の口から聞きたくない。
いつもの様に「群れてると咬み殺す」と言おうとしたのに。
なぜか。
「・・・僕も、卵焼き好きなんだけど。」
何を言っているんだ僕は。自分でも混乱して押し黙っていると、沢田は一瞬呆けた顔をした後、勢いよく、
「じゃあ、じゃあ、明日母さんに頼んで、ひばりさんの分も作ってもらってきますね!」
と言った。
そんなこと頼んでない、と思いながら、やはり口から出てきた言葉は違うものだった。
「・・・待ってる」



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