■九月二十三日
夢を見た。
夢の中の沢田は、頬を染めて幸せそうに笑いながら僕に向かって
「好きです」と言った。
僕は嬉しくなって「僕もだよ」と答えようとしたが、なぜか声が出ない。
彼の腕を掴もうとしたが、まるで空気のように僕の手をすり抜けてしまい捕らえられない。
僕は焦りを感じ必死に追いかけるが、沢田は笑いながら逃げていく。
もう少しで手が届くかという時、彼は大きな蜘蛛の巣に捕らえられてしまった。
助けようと手を伸ばすのに、その蜘蛛の巣は沢田ごと遠ざかっていく。
どんどん小さくなっていく沢田の周りからは無数の黒い手が彼めがけて伸びて行き・・・。
「沢田!!」
やっと声が出たと思えば、自室のベッドの中だった。
夏の暑さもだいぶ和らいできたと言うのに、寝巻きはぐっしょりと汗を含んでいた。