■九月七日


下校の鐘がなる少し前に、僕は二年の教室へと向かった。
また今日もあの子が来なければ、僕の決心が揺らいでしまいそうだったからだ。
チャイムの音と同時に教室の扉を開ければ、みな一斉に僕の方に顔を向けた。
「沢田」
名を呼ばれ、窓際の席で驚いたように僕を見つめていた彼は、おずおずとこちらへ近づいてきた。
「・・・今日は、来る?」
どうして来なかったとか何があったとか、尋ねたい事は山ほどあったが、今ここで彼を困らせたくはなかった。
俯く沢田をじっと見つめて返事を待つと、ずっと下を向いていた彼がはっと何かに気付いたように顔を上げ、教室を振り返った。
皆がこちらを見ている。
しかし沢田が気にしていたのは、ただ一人の視線だけだろう。
すぐに僕の方に向き直った彼は、ひどく焦った様な顔で今度は目を逸らさずに見つめた。
「今日は、用があって・・・先に帰ります」
そういい捨てると急いで自分の席から鞄を取り、僕の横を通り過ぎて教室を出て行った。



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