■九月五日


先週の沢田の態度が気になって、彼に気付かれぬよう度々教室を覗きに行った。
友人たちと楽しげに話をする彼の笑顔は、何処となくいつもと違っている気がした。
普段なら応接室に呼び出す校長との打ち合わせも自ら出向き、遠回りして二年の教室の前を通り過ぎた時、ちょうど中休みの最中で沢田はいなかった。
諦めて応接室に戻る途中でふと廊下の窓から外に目をやると、校庭から渡り廊下を過ぎた校舎の物陰に、沢田と・・・笹川の妹が、二人で話をしていた。
僕の位置からでは会話はおろか俯いた彼の表情すら確認は出来なかったが、相手の女が嬉しそうに頬をほんのりと赤く染めているのは見て取れた。
その親密な雰囲気に僕は焦りを感じながらも、二人が教室に戻るまで黙って見続けた。

昼休みに応接室の扉を叩いたのは、沢田ではなく草壁であった。
「沢田さんから、委員長にこれを渡すようにと」
と僕に差し出したのは、水色の布に包まれた弁当箱だった。
「今日は・・・昼も放課後も、来られないとのことです」
他にも何か言いたげな草壁を尻目に、僕は弁当箱を穴の開くほど見つめていた。





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