■八月二十五日


もうすぐ夏休みが終わる。
とはいえ僕にとっては休みなど無いようなものだし、彼との時間も午前になるか午後になるかの違いだけなので、特に変わりはない。
が、彼にとっては大問題であるようだ。
「まだやりたいことたくさんあるのに・・・あ、プールも三回しか行ってない!」
・・・三回は誰と行ったんだ、という突っ込みは心の中だけに留め、何気なく「宿題終わった?」と問いかけると、彼はわずかに眉を寄せた。
「補講のおかげでほとんど終わってますけど、一つだけ、読書感想文が残ってます」
「何書くの?」
「夏目漱石の"こころ"です」
「最後まで読んだの?」
「はい!今漫画も出てるんですよ!」
読書感想文と漫画の関連性が良く判らないが、とりあえずふうんと返事をした。
と、沢田は急に静かになり、肩を落として俯いた。
「・・・もうちょっと・・・出かけたかった、な」
小さく呟くと、ちらっと僕の方を見てまた下を向いた。
今度は読書感想文と外出の関連性を考えていると、沢田は突然顔を上げソファーから立ち上がる。
「あの俺、用事できたんで帰りますね!」
そう叫ぶと、急いで応接室から出て行った。

なんだか今日は、置いてけぼりを食った気分だ・・・。




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