根もはもない噂は75日が経ってもあせることはなかった。ことわざとは一般的な状況下であてはまるもの。わたくしたちは、どこかやはり特別であったから、いつまでたっても噂は消えることはなかった。

そして、新たに生まれたのは新しい噂。

「ねーえーめごさんはやく帰ろうよー」

わたしと、この軽薄な面持ちの彼が恋人同士であると言うもの。その噂は瞬く間に広がりまたもや校内の誰もが知るところとなった。面持ちのよい彼はその噂が流れる前は相当人気があったらしい。そのおかげでわたしは新たな嫉妬の的だ。

「ねえ、猿飛さん。」
「なあにい?」
「わたくし、あなたとつきあってないわ」
「そうだね」
「だったらあの噂。少しは否定してくださらない?」

そう。この新しい噂が消えないのはひとえにこの猿飛さんの煮えきらない態度が原因なのだ。噂の真偽を確かめられても、曖昧にしか答えない。おかげでわたしは政宗様の次にこの人に乗り換えあげく捨て去った尻軽女だ。

「俺はそうなりたいからねえー」
「……。」

無下にしているわけではない。かれがいくら元忍だからと言って彼の言葉の本気を疑うわけではない。ただ、気になるのは、彼は付き合いたいだの恋人になりたいと仄めかすものの、一度もわたしに『好意』は告げていないのだ。

「……はあ。帰りましょう。」
「送るよ。」
「あら、いいわよ。逆方向だもの。」
「いや、俺様、竜の旦那に用があるから。」
「そう?じゃあ行きましょうか。」

政宗様に用が、というより屋敷にいる幸村さまにかもしれない。屋敷には少しいづらい。政宗様の部下のかたたちは、政宗様がわたしを愛していないことは多くが知っていた。敬愛する主が最愛を見つけたのだ。嬉しいはずだろう。

そして、彼らは優しい。わたしが婚約破棄になってしまった以上、屋敷にいるべきではないとは、とうていかんがえない。そんなことを、考えているのはわたしだ。
わたしがあそこにいる理由がわからないのだ。親元に変えるべきかとも思う。婚約破棄になったからには報告もしなければなるまい。

みちすがら考えることを考えながら、ぼーっと、石を蹴りながら歩いていた。

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