あれは三百年くらい前のことであっただろうか。私には共に旅をしていた友人が5人いた。6人で世界中を旅していた。薬を売って暮らしていた。その中でリーダー格であり、私たちに名を与えた彼は、シン・リーといった。
6人で楽しいと言えるだろう生活を邪魔したのは息子への愛でくるってしまったシンの父であった。彼らはシンと私たちに呪いをかけた。シンの時間を奪い、過去へしばりつけ、そして私たち四人の誰かの血を飲み干すことを除法として残した。
私たちはバラバラになった。
春日はフランスでキャビンアテンダントになった。山秋は株で儲けてのんびり北欧で暮した。風冬はアメリカで軍隊に入ったらしい。夏林は日本に行って友人と暮らしていた。私は相変わらず薬を売って暮らした。
暫くして夏林が死んだと聞かされた。ばかばかしいと思ったけれど、シンが彼の首に口をつけ血をすすったと春日から涙ながらに聞かされてあぁ、ほんとだったんだと思った。春日はシンを見損なったという。風冬は彼が憎いという。山秋はただ不安だと言った。
けれど私は、それは違うと思った。
多分夏林は優しい子だったから、だからシンを死なせないために自分を傷つけて、だからシンはそれを止血しようとした。シンは性格がいいとは言えないし、確かに自分本位な人間だったけれど、自分の命のために人を殺す人間じゃなかった。