邪魔された。あと一人なのに。私が負けたただ一人、赤色が私の前に立ちはだかった。久しぶりに会ったそのかあはあの時と変わらず激しく美しく、あの人のように燃え盛っていた。だからこの女は嫌い。

「どいて。」
「やぁだね。」
「そこに橙がいるのは分かってんの。殺すからどいて。」
「そんな理屈でだれが通すんだよ。」

うざいうざい消えろ消えろ消えろ死ねばいい殺してやる。心の中が憎しみで飽和状態。もうなんも考えらんない。体がもういっぱいいっぱいだ。

「大体よぉ、あたしでさえあんなぼろぼろになった相手にお前が勝てるわけねえじゃねえか。」
「勝てるよ。」

自信があった。根拠があった。橙と赤色が戦ったのは真実。橙が負けたのも真実。よって橙が今ボロボロであろうというのはただの憶測の域を出ないけど、この女と戦って負けたんだったら、決して無傷とはいかないはずだ。
そして、なにより。

『お前の意志は堅い物か』

そりゃあそうだよ、奇野さん。あの橙にね、すべて奪われたんだから。
レンさん、トキさん、アスさん、それに私の一番一番大切な人があの橙に奪われた。私のすべてだったあの人を、あの橙が奪ったの。
その憎しみで、私は力を手に入れた。

『その意志に少しでも迷いが生じたら、それがお前の最期。』

迷わない。私は迷わない。

「どけよ、赤色。殺すぞ。」
「洒落になってねえ冗談言ってんじゃねえぞ。」

怒気をはらんだ赤色の声。いらいらしたように赤色の足がとんとんとん、とリズムを刻んだ。赤色は最強だ。いくら私が強くなったからと言っても、私が必ずしも赤色に勝てるとは限らなかった。ただ出し抜くだけでいい。

橙を殺したら、
後はどうなってもいいんだから。

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