暫く出てくると言ってまたカラオケで待ち合わせた零崎はどうやら釈然としない顔で部屋に入ってきた。ラーメンを食べていた僕は顔を上げて手を上げると、はぁ、とため息をついてその小さな体を勢いよく椅子に埋めた。

「なんかあったのか?」
「んー、べっつに。少々言っちまえば、あの橙の子を殺しに来るやつがいるぜ。」
「真心を?」

今の真心は最強の状態だろう。奇野さんを殺して逃げた真心を今僕たちは目下捜索中だった。そしてまた厄介な情報がこの男の口からこぼれる。

「まあ、零崎一賊の女なんだけどよぉ。」
「なんで?」
「敵討だよ。親代わりをあれに殺されたって。」

はぁあ、とまた大きくため息をつく零崎は珍しい。それほどまでにその女とやらが気になるのかと思って、どうしたのかと聞けばただ疲れたんだよ、と言われた。今その子にあってきたところらしく、それで疲れているらしい。なぜ。

「正直さあ、リルが殺されたのは意外だったんだよな。わりとあの男最強だったから。狂ってたしな。」
「哀川さんより?」
「そ、アイカワさんより。」

何ともなしに行っている風ではあるが、今この男爆弾発言を投下したのに気付いていないのだろうか。人類最強より最強なんて、そんなの人類じゃありえない。

「だから、それほど橙が強いってことじゃねえか。」
「そうだね…」
「それはあの女もわかってんだよ。」

だけどさあ、と立てた膝に顔をうずめる。

「怖がってないんだよな。あいつ。」
「怖がってない、ね。」
「そう。いくら死を覚悟した人間でもさあ、死にに行くのは怖いんだよ。なのにあいつは、」

怖がってないんだよ、ともう一度繰り返した。
それは、それほどまでに恨みが強いということ。それほどまでに、命を賭してでも、敵を討つという意志が強いということ。


「ま、あの女も弱いわけじゃねえ。弱った橙ちゃんを殺されないように気を付けるんだな。」


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