「お前さあ、人殺して回ってるってマジか?」
「そうだけど。」
久しぶりに会った生き残りの家族に問いかけられた。私が肯定すれば彼は呆れたようにため息をついて、傭兵に追われてるぞと言われた。そんなの知ってる。知らないわけないじゃないの。
「だったらもうやめとけよ。仇討ったってしょうがないだろ。」
「零崎はそういうものだよ。あんたはレンさんしか家族と思ってないからわかんないんだよ。」
「かもな。でも実際、」
最後の砦はきついと思うぜ。
あと一人、探し回って殺しまわってあと一人。京都に来た私に弟は珍しく真剣な顔で私にそういった。橙がやばいのくらい知ってる。レンさんも、トキさんも、アスさんも、みんなあの橙にやられちゃったんだから。零崎三天王が敵わなかった相手に私がかなうわけない。なにより、あの人が敵わなかったのに。
「私はアスさんと違うもん。」
「なんでそこで大将が出てくるんだよ。」
「アスさんは二重人格だから。」
子供っぽく頬を膨らませて言うとあぁ、と彼は納得したように言った。なんだ、こいつ知ってたんだ。
「零崎がなくなっちゃったら、もうなーんもないんだよ。」
空っぽとつぶやくと灰色の空に吸い込まれていった。
「ま、あいつと戦うのはあんまお勧めしないぜ。」
「……わかってる。」
橙と戦ったところで瞬殺がいいところだ。だったら今ここで故郷に引き返して家業に入るか、今にも去ろうとしている彼を追いかけて一緒にいる新しくできた妹とやらと一緒に暮らした方がましに決まってる。そう、それだけど。
「気が済まない、ってこういうことを言うんだろうね。」
いらいらが止まらないんだ。死んでもいいから、あいつを仕留めたいんだ。