今まで私が築き上げてきたものはなんなのだろう。優秀な頭脳。完璧な人材。そうあれとそうあろうと言われ努力してきた私が振り向くと、私が歩いてきた道には何も落ちていなかった。後悔も未練も何もないつまらないものだった。
家が優秀な家だったせいか何事も昔から強要されていた。華道茶道書道ピアノに勉強。完璧でいなくてはいけなかった私にはすべての完璧なレールが用意されていた。でもひとつ誤解しないでほしいのは、私は全然それを苦に思っていなかったということ。むしろその束縛は私の人生を楽にしているとさえ時に感じられた。

ヒソカは私とはまるで違っていた。私に過去の未練を話し、未来へ託した後悔を話した。悔しそうに団長と戦えない話をした。成長が楽しみなこのことを気持ち悪い笑みを浮かべながら話をした。穏やかな笑みを浮かべ友人の話をした。
それは私の知らないものだった。

知らないものを知って私は過去を振り返るようになった。今までにしたことがないことだった。そして私の作り上げた道には、未練も、後悔も、悔しさも、楽しみも、何も落ちていないことが分かった。少し虚しく感じて少し泣いていた私にヒソカは楽しそうに、そして軽い調子で、今まで私が考えることもできなかったことを口にした。

「やめちゃえば?」

あっさりとそういったヒソカは特に私を唆そうともしていなかった。ただ純粋に泣いている私を見てそう思ったのだろうと感じた。止めてしまえば楽になるのかもしれないという感想をこの男は抱いたのだと思った。

「そんなに苦しいんだったら続ける理由なんてないじゃない。」

続ける理由?そんなのいっぱいあるよ。家のため、父のため、母のため、兄弟のため、いままで作り上げてきた栄光のため。そういえばヒソカは呆れたように笑った。それは嘲笑ともとれる笑みだった。

「君さあ、周りの人間を幸せにするために生きてきたわけ?意味わかんないね。」

その言葉は、私と対極にいるからこそ言えることだった。

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