私のバカ。昔っから私ってなんでこんなに馬鹿なんだろう。欲しい物を欲しいと言わず、大好きなものを自ら手放して、失ってばっかりの人生だ。ばーかばーかと誰に言うでもなくつぶやきながら夕陽を見ていると何故か今持っている全ての物を捨て去ってしまいたい気持ちになった。

「何も感じないわけないじゃないの。」

大好きだった。愛してた。その人が幸せになってほしいと思った。でももちろん、私にだって、幸せになりたいと思う欲くらいある。やっとつかんだ幸せを手放してしまって何も感じないわけないじゃない。

私は外見は整っていると思うし性格だって悪くない。頭だってばかじゃないのに、何で欲しいものはいつも手に入らないんだろう。

気に入ってた簪は姉に譲ったし、両親に言われるから遊びを捨てて勉強に専念した。大好きな大好きな甘いおまんじゅうを道で泣いていた男の子にあげたこともある。

「ほんとう、損な性格ねぇ……」
「ほんとにね。」

返ってくると思わなかった返事がすぐ隣でして思わず飛び上がった。横を見れば立っていたのは真田付の忍び、先ほど別れたばかりの猿飛佐助だった。盗み聞きされていたのと、少し泣きかけていたことへの羞恥が重なって顔が真っ赤になった。

「ど、どうしていらっしゃるの、」
「お礼言いたかったんだけど、声かけづらくてさ。」

ごめんね、と笑う猿飛はお礼に来たという。恥ずかしくて俯いて並んで歩けばごめんね、と謝られた。

「なにがです?」
「気を使わせたでしょ。」
「真田さんに気を遣ったわけじゃあありません。私は政宗様に幸せになってほしいだけです。」
「そう。でも、旦那が助かったのも確かだから。」
「……それを言うためだけにわざわざ追いかけたんですか?明日でもよかったんではありません?」
「んー。なんとなく追っかけようかなって気が起きただけ。気にしなくていいよ。」

しばらく無言で二人で歩き、伊達邸についた。

「おっきいね。」
「そうですわね。では、また明日。」
「うん。……あ。」

ぐい、と別れ際に腕を引かれ、耳元に唇を寄せられた。

「竜の旦那と別れたんだったら、俺様にしない?」
「………お断りですわ!」

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