「――、そ―じ」


また、夢を見た。
あの男の子が笑っている夢だった。


起き上がると斎藤さんが横で穏やかに寝息を立てていた。まだ時間は丑三つ時で月が高い。


「―――うそ」


ゆっくり斎藤さんの白い手に自分の手を伸ばす。
その手は、斎藤さんの手に触れることなく、ベッドのシーツへ通り抜けた。


「いやだ、うそでしょ。」


手を引いてもう一度手を伸ばす。
こんどは肌に触れられた。

冷たいが確実に白い肌に触れられた。

(よかった)

安心してほっと息をついた。

横たわっている斎藤さんは月の光を浴びてゆらゆら揺れているように思えた。

どうしようもなく不安に感じる。
どうしようもなく、悲しく感じた。







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