はじめまして
あの日のことを朝食を作りながら考えていた。
あの日、斎藤さんがこの世界へ来た日、私は東京のお父さんに会いに行っていた。お母さんは外に出られないから、私一人で。
本島から飛行機に乗って東京について、それでお父さんにあった。
でもお父さんは用事があるといってしばらく観光していなさいといった。だからその辺をプラプラ歩いて飽きた私は一足先にお父さんの家へ向かうことにしたんだ。
お父さんの家がある住宅街を歩いていると、広い野原があった。
そしてそこに、斉藤さんがいたんだ。
野原に斉藤さんは青白い顔を月光に照らされて横たわっていた。
傍でしゃがみ頬に手を添えると肌は驚くほど冷たくて、そしてゆっくり瞳を開いて、何度が瞬きをした。
その瞳は驚くほど藍色で、そして驚くほど斎藤さんは美しかった。
あのさびれた野原に横たわる冷たい彼が、美しさのあまり浮きだっているように見えた。