風が強い


「1889年、アームスタス条約が解消されてそれにより―――」

ぼーっと天井を見ながら日本史の授業を聞き流す。戦国時代とかならまだしも名に入ってからの歴史は大嫌い。日本家屋は好きだけど西洋風の建物は大嫌い。外国を受け入れてからの日本なんて大嫌いだ。

「くぉらぁっ!あき!!!てめえぜんっぜん授業聞いちゃいねえだろ!!」
「………」
「せんせー。どうやら寝不足のようです。」
「ばかが一周まわってシリアスになっているのが証拠です。」
「……っち、ほっとけ。」

天井を見ていて楽しいはずもなく、しばらくして視線を外して外に目をやった。

「……あ。」

グラウンドを見るとトンボ掛けをしている斎藤さんが眼に入った。

斎藤さんは商店の店主が娘の家へ遊びに行くということで店を休みにするのですることがなく暇になり、学校で用務のバイトをし始めたのだ。

風が強くて砂埃がひどくトンボ掛けも大変そうだ。
藍色の髪が風に乗って揺れて顔をしかめながらも砂を慣らしてゆく。

(……こっち見た。)

柔らかく微笑んで片手をあげた斉藤さんはすごく綺麗だった。
右を指さし口パクで"じゅぎょう"と言った。

藍色の髪が乱れているけれど、斉藤さんはとてもきれいだった。




「 先生、あきが鼻血出してまーす。 」
「 ……っち、ほっとけ。」


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20111216




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