井戸から出て来た
その日は楽しいはずの日だった。あのきれいだけど少し退屈なあの島から出て東京に住んでいる父と祖父母に会いに行く日。楽しみじゃないわけじゃない。でも朝から首は寝違えるし、海は大嵐だし。せっかく楽しいひだってのに、なんだか微妙。

「じゃ、行ってくるね。」
「えぇ。気を付けてね。」

お母さんはお父さんと離婚した後すぐに体を壊して島から出られない体になってしまった。島から本土までは船でたった30分。だから私は簡単に行けるけれど、お母さんはその20分でさえも耐えられない。だから今日、私は一人で東京に行く。

私の島は、島といっても人口は多い。ただ島の南側は人はあまりいないし、民家もあまりない。でも海はものすごくきれい。可もあり、不可はなし。っていうかんじのすごく良い島だ。

「あ、お父さん!こっちこっち!」
「おぉ、あき!おっきくなったなぁ!」

二泊三日の楽しい旅。その初日の最高の日。
それなのに。


私には東京についてからの記憶がない。



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20110928



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