買い物するA
「斉藤さん、やっぱり着物がいいかな。」
「あぁ、売っているならそっちのほうがいい。」
「あぁ、ちょうど安売りしてる。らっきーらっきー。」

生地が軽いな、なんて触りながら真剣に選ぶ。確かに昔のものに比べれば安っぽいかもしれない。でも斉藤さんは文句を言うことなく一番値段が安いものから選んでいる。
そんな気遣いができる斉藤さんもとってもかわいいです。

「何色がいいの?」
「……黒。」
「おぉ、即答。斉藤さんは髪が藍色だしそっちも似合いそうだけどなぁ。」
「い、いや…じゃあ、」
「じゃあ二着買おう!黒もほしいんだよね!」

嬉しそうにうつむいて着物を受け取る斉藤さんやばいかわいい!!

「あき、鼻どうしたんだ!?」
「い、いや転んじゃって……!」

斉藤さんといると失血死しそうだ……!





「よし。じゃあさすがに褌買うのにはついていけないから、お金渡すから買ってきてくれる?」
「あぁ、分かった。」




斉藤さんが褌を買って帰りの船に乗ったのは午後すぎだった。本島はまだ結構涼しいのに島に行くといきなり夏みたいにかっと暑くなる。

「暑いなぁ……斉藤さん、アイス買っていこうか。」
「あ、あいす?」
「氷菓子だよ。」

島について海沿いの商店に向かった。

「おっちゃーん。アイス二つ!」
「はいよ。おや、彼氏かい。」
「バカ言ってんじゃないよ。ほら早く。」
「生意気になったねー。ほれ。」
「斉藤さん、ほら、あい、す……」

おっちゃんからアイスを受け取って一つを斉藤さんへ渡そうとすると斉藤さんはその古びた商店の扉に張られた紙をじっと見ていた。

「店員……」
「どうしたの?斉藤さん。」
「主人、この張り紙の店員募集とやらはまだやっているのか。」
「え、なに。バイト募集してたっけ。」
「あぁ。最近暑さがこたえてなあ。一人じゃ危ないって言われてさあ。」
「へえ……」

そんな話をしていると斉藤さんはいきなり店主へ向かい頭を下げた。

「俺をここで雇ってはもらえないだろうか。」
「え!?」
「え、別にいいけど……」
「ありがたい。」
「だめだよ斉藤さん!何言ってんの!斉藤さんなんか美しすぎて危険だよ!みんな失血死しちゃうよ。」
「いやそれあきちゃんだけだろ。」

「なにがなんでもダメだってば――!!」

力いっぱいの反対もむなしく斉藤さんが働くことは決定してしまった。


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20111212

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