井戸に落ちた
朝から嫌な予感はしていた。首は寝違えるし、刀は刃こぼれするし、朝食の当番は総司だった。屯所で預かっている少女に斎藤さんって茄子みたいだと言われた。最後に至ってはよくわからない。
「斎藤。頼みがあるんだが。」
「なんでしょう、副長。」
簡単な話だった。副長が書いた重要な書類が総司にとられたらしいから、中を絶対に見ずに持って来いとのこと。
調子が悪いとはいっても左程気にすることは無いと思った。
だがそれは間違いだった。
今日の俺は調子が悪いのではなく。
…………………
敵に斬られた。
ふとした瞬間のことだった。自分が敬愛してやまないあの方からの預かり物を咄嗟に無意識に庇って隙が出来てしまった。
辺りに光はないが月明かりが妙に明るい。今日は月半ばか、と脈絡無く考えた。
(月の下で死ぬのも悪くはない。……だが)
まだ死ぬわけには行かなかった。
…………………
そう。今日の俺は調子が悪いのではなく、
運が悪かったのだ。
………
20110927