俺と高杉が出会ったのは、五歳のころだった。先生の塾で暮らしていた高杉。そこに通っていた俺。両親が死んで俺も塾で暮らし始めた。当時塾生は二十数人いたが、先生が死んで、攘夷戦争に参加して、そのあとも生存の確認がされたのは、俺と、銀時、桂、辰馬、そして高杉だけだった。

辰馬は、貿易商になり、銀時は万事屋を開き、桂と高杉は戦争が終わってもなお攘夷活動に徹した。俺は行くところがなく、試衛館に転がり込んでそのまま流れるようにして真選組になった。

真選組は江戸の治安を守るものだと最初聞いていた。それが俺の立場を危うくするものだと気づいたのは、働き始め、攘夷志士が次々つかまるようになってからであった。捕まったものには顔を知っているものもいた。その時、俺は危ない橋に乗っているとようやく気付いた。

鈴が鳴るたび思った。

いっそ、裏切ってしまえば。





俺が今この状況を変えるための選択肢は三つあった。裏切ってしまうか、真選組をやめてしまうか、すべてを副長に話してしまうか。三つと言っても俺は臆病ものだったから、家族同然の真選組から離れるのは苦痛にしかならない。どの決断をしても苦しむのは必至だった。要するに俺は臆病者の上に優柔不断だった。

いつかその時が来てしまう。

「#りくと#!!」
「副長、なんですか?」
「情報だ。今晩、高杉がやらかすぞ。」

具合が悪いという理由で会議を休んだその日の昼、復調が俺の部屋に来て会議の内容を俺に簡潔に伝えた。高杉は今晩幕府の高官と接触しひと暴れするらしい。そこを捕縛すると聞いた。

具合が悪いならお前は屯所に残っていろと言われた。くれぐれも気をつけろと言う。
その気遣いが、トシさんの優しさが、俺には突き刺さる刀刃に思えた。

「うん、今日はここに残る。気を付けてくださいね。」

馬鹿、俺、なんてこと考えてんだ。





siori