全ての物を僕は
 


吉継が敵に捕まった。しかもそのファミリーのボスにだ。暗殺の仕事を頼んだものの住んでで敵に囲まれてしまい瀕死だったという。そこへ、あの白い男が偶然通りかかったということだった。

「嘘だ!あんなところに偶然通りかかるわけない!」
「あぁ、ツナ。そんなこと俺たちだって解ってる。」

執務室で思わず怒鳴ればりぼーんから冷静な言葉が返ってきた。俺は居ても立っても居られない。あんな卑劣で冷酷な男に大事な兄を取られるなんて。

その上あの日自分もそのファミリーと戦っていた。でも、守護者たちが来てくれたから、楽勝で勝利できた。でも気づいたら吉継との無線は切れていて、何度かけなおしてもつながらなくて、やっと繋がった時、そこから漏れた声はぞっとするような冷たい声。

『ねえ、吉継クンは貰ったよ。いいよね、』

その続きは聞かなくてもわかってた。
その声に交じって吉継の泣き声が聞こえていた。その声があの日からずっと耳から離れなかった。
吉継が俺にずっと劣等感を抱いていたことなんてわかってた。吉継が俺より全てにおいて勝っているのに俺にそういう感情を抱いていることなんて俺は正直理解できなかったけれど、俺は確かにそれを感じ取っていた。

でも、俺は気づけなかった。
まさか、吉継が、涙を流すほど、苦しんでいたなんて。

「ツナ、手掛かりなしなのな。向こうは会合の席を設ける気もないらしい。」
「あくまで吉継は渡さないってわけか……」

山本とリボーンが話す声がどこか遠くに聞こえる。まるでステレオ放送みたいだ。

「なんで……」
「ツナ?」
「なんであの日吉継の所に誰も行かなかったんだ!!!!」

あの日、あの日一人でも吉継の所に行っていれば、吉継があいつに落とされることなんてなかったんだ。あの男を心に入れる隙なんてできなかったのに!!

「いや、それが……上からの、命令で……」
「なに!?それがなに!?どうしてそんな変な命令聞いたの!?誰も行かなかったら、吉継が死ぬことくらい分かってただろ!?なに、それとも吉継は死んでも良かった!?」
「おい、ツナ!!」
「少し考えればわかることじゃないか……!!いつから友達よりファミリーの命令を聞くようになったの!?それより吉継より俺のほうが大事だった!?」
「……っ」

そんな図星って顔しないでよ。なんで?どうして?山本はもともと吉継の友達だったじゃないか。雲雀さんだって吉継と仲良かったじゃないか。骸だってあいつを気に入ってたし、獄寺君だって俺とあいつを同等に見ていた。はずなのに。

「もう、いらないよ……」
「ツナ……」
「ボンゴレのせいで、みんなのせいで、吉継は、俺を憎むようになるんだ……」


ただ大切だっただけなのに。
ただ大好きだっただけなのに。
みんなが俺を選ぶから、吉継は、どんどん、俺から離れて行くんだ。


『じゃあ、行ってくる!』


いつだって、最後の時だって、吉継は笑ってた。

あぁ、俺のこと、大嫌いだったろ?憎かったろ?なのに無理して笑ってくれてたんだよな。ボスが俺に決まったときだって笑っておめでとう、って言ってくれて。
雲雀さんと付き合うことになったって言ったら本当におめでとうって言ってくれて。
ハルのこと好きだったんだよな。でも俺のせいであきらめさせた。
京子ちゃんのことすきだったんだよな。でも俺のせいであきらめさせた。
本当にごめんな。本当に。


でも、でも、吉継。
好きなんだ。お前のことが、大切なんだよ。


どうしても、取り返したいんだ。









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