会いに行くから
 

【えーっと、今日は有名なカフェに来ましたー。】
【有名って言ってもカフェだけどね。】
【うるさいなぁ。いいんだよっ、俺はこういうので!】
【払いがいないなー。まあ僕もこっちのほうが好きだからいいけどね。】
【じゃあいいじゃん(笑)】

【おー、きた!ジャンボパフェ!】
【あ、マシマロのってる。】
【マシュマロな。】
【マシマロだよ。】
【だからマシュ……マシマロな。】

【うわー、白蘭ってほんとうまそうに食べるよなー】
【だっておいしーもん。吉継クンも食べなよ。あ、でも】
【マシマロは食べねえよ。】
【すごーい。よく言おうとしたこと分かったね。】
【お前、言うことワンパターンだし……】
【でもはい、1個だったらいーよっ】
【え、なに雪でも降るの。】
【ここハワイだよー。じゃ、なくて!マシマロおいしいから!吉継くんも食べるの――】
【……ありがと。】
【あ、照れてるでしょ。】
【照れてねえよ!!】
【かわいいなあ、もう。】
【うるせえよ……!】



「………」

いいなぁ。幸せそうで。頭の中で何度もリピートされる、2回目の未来への旅行で未来の自分が見ていたビデオ。なんて幸せそうなんだろう。うらやましい。

「………」

俺はもうあの人以外の人を愛せそうにないし、でもあの人はもういないし。だから未来の俺がうらやましいと思ってしまう。あ、未来の俺のほうがかわいそうか。

「おい。」

なんでだろう。あんなに優しそうな人がなんで悪いやつなのかなあ。裏表激しい人なのかなあ。それさえなければ今も普通に、

「おいっ!」
「ひぃっ!!!!!び、びっくりしたぁ――。なんだリボーンか。どうしたの?」
「どうしたのじゃねえ!さっきから夕飯だって呼んでんだろうがっ!!」
「えっ、あそうなの?ごめんごめん!今日は綱吉は?」
「山本のとこだ。」

最近綱吉は家でご飯を食べない。俺と会いたくないんだろう。

「う――ん。リボーンは綱吉んとこいなくていいわけ?」
「いや、」
「あ、もしかして俺の監視っ?大変だね――。そっかそっか。じゃあ綱吉に伝えといてよ。明日からは俺が外で食べるので家で食べていいよって。」
「おまえ、」
「あのね、大丈夫だよ――。そんな警戒しなくても、さ。俺、そんな馬鹿じゃないし。俺が何したって無駄だってことくらいわかってるし。」
「おい、」
「俺が何したって、」
「おいっ」

何をしゃべってるんだろう。こんなこと言ったらますます警戒されるだけなのに。でも、俺は、これ以上何も失いたくなくて、わがままかもしれないけれど、白蘭をなくして、独りぼっちだけど、もう、なにも。

「もうやだ……なんで、俺を未来に飛ばしたんだよ……っ」

未来を知らなければ、ただ一人の寵愛を受けることを知らなければ、唯一人を愛すことを知らなければ、あんな幸せな生活知らなければ、こんな今の生活に虚構性を感じることもなかったのに。あの人に会いたいと、思ってはいけないことを思うことだって。

「結局、私欲じゃんか、もう、俺を探そうとしないでよ。一人でも、さびしくても、あの人と生きてるんだから。」

もういやだよ。








「吉継、まだ起きてんのか?」
「あぁ。いろいろ考え事があってね。」

スーツ姿のやつが夜中、縁側で空を見ていた俺に声をかけた。やつが銃を持っているのは知っていた。それの安全装置がはずされていることも。

「なあ、リボーン。」
「なんだ。」
「俺さ、この家から出ようと思ってるんだ。」
「……どういう意味だ。」
「そのままの意味だよ、って普通は言うところなんだろうけど、この意味はただ家を離れるってことじゃない。」
「……」
「沢田の姓を、捨てたいんだ。」
「……」
「もう、縁を切りたい。この家と、というより忌まわしきボンゴレの血と、か?」
「あいつを殺した、ボンゴレとかかわりたくない、と。」
「うーん。それは、違うかな。」


そう、それは違うよ、リボーン。
俺は昔からそうだった。どんなに頑張っても、どんなに頭がよくなっても。いつも求められるのは綱吉だった。いつも愛されるのは綱吉だった。はじめてコンビニで見かけた女の子に恋をして、だけどその子は綱吉にぞっこんになった。山本はもともと俺の親友で、だけど今は綱吉の親友になってる。次に好きになった学園のアイドルは、もう心は綱吉のもの。ボンゴレに求められたのだって、俺じゃない。


いつだって俺は、劣等感を抱いていた。




【ねえ、吉継クン、】【君は、思わないのかい?】【綱吉君ばかり、】【どうしてって。】【君は頑張ってるのに。】【戦闘能力も】【勉強も】【炎の扱い方も】【超直感だって。】【なのに、】【ボスは綱吉君だ。】【ねえ、】【吉継クン。】




【僕は君を愛してあげる。】



先に求めたのは俺だった。






ああ、待ってて。
すべてを捨てて、今会いに行くから。





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くっらぁ……

最後の別に死ぬって意味じゃないですよ。とりあえず沢田を出て、日本を出発して、いろんな世界を見ながら、『現代』を生きる彼を探しに行くということです。
リボーンもあえてとめません。なぜか。
再開話が書きたいところですが、それは原作で現代白蘭がどうなってるのか明かされてからですよね。くぅ、待ち遠しい。



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