またいつか君を
 

※リボーンが大人の姿です。




「あっれー。っかしいな。……母さーん。」
「どうしたの、吉くん。」
「綱吉とかリボーンとかさ、どこ行ったかわかる――?」
「んー。お散歩にでも出てるんじゃないかしら?」

呑気らしい母さんの答えだ。でも、なんだか妙だ。綱吉やリボーン、獄寺、山本だけならばともかく笹川や三浦、おまけにランボやイ―ピンまで見かけない。了平さんやたぶん、ひばりさんも。黒曜組にまで確かめに行くわけにはいかないけれど、もしかしたらいないのかもしれない。なんだか俺に関係する人が一気にいなくなったみたいだ。つーか、俺だけ取り残されただけかもしんないけど。

「……また、ボンゴレ関係かな。」

面子から考えるとそうだろう。俺は今日は部活だったし。

(もしかしたらたまたまみんなどっかに行ってるのかも)

それでも俺の微弱な超直感がだめだだめだと告げる。嫌な予感しか、しない。俺はいやな予感ていうものばかりが当たる。本当に、嫌なことに。
そこまで考えた時だった。一階からどすんどすんと、激しい落下音が聞こえたのは。もしかして嫌な予感が外れたかな、と期待して下に行ってみると、確かにそこにいたのは今の今までいなかったはずの綱吉たちだった。

「綱吉!!今までどこ行ってたんだよ!リボーンもランボたちも!」
「え、あ…ちょっと、十年バズーカの故障でさっ!でももう治ったし平気だって!」
「そう……だったらいいけど、怪我もしてるみたいだし……」

嘘だ。
綱吉はうそを言っている。それに俺と目を合わせようとしない。それはたぶんうそをついたことへの後ろめたさだけじゃない。たぶんいなくなっていた間に、俺と気まずくなる何かしらのことがあったんだ。

「う、うん!オレ、ちょっと疲れてるから寝るな!心配かけたみたいでごめん!」
「おう……」

このときは、ただ綱吉も疲れてるだけだと思った。明日になれば元通りだと思っていた。背後から突き刺さる疑念の視線も、気のせいだと、思えた。




でも、一週間後。さすがに俺も違和感に気がつき始めていた。近くにいて分かる、俺以外のほかのメンツの結束感。そして俺たちだけじゃない、笹川や三浦までがその中に含まれていた。おそらく二人もマフィア関係のことを知ったんだろう。

「あ、吉継さん!おはようございます!」
「うん、おはよう、三浦。」

俺が入ると、空気が止まる。
綱吉が行った十年バズーカの故障でみんなが飛ばされていた間、一体何があったというんだ?今まで綱吉が俺に嘘をついたことなんてなかったのに。俺に絶対に言えない何かが、未来では起こったというのか?
もう限界だ。気まずさの中で、頭が狂いそうになる。



そんな、時だった。ランボの十年バズーカに被弾したのは。



「吉継!!!!!!!!!」

薄れていく意識の中で見たのはなんだか妙に必死に俺をつかもうとしている綱吉だった。







「ん―――」

十年バズーカのものだろう。もわもわとした煙が辺りに立ち込めている。俺が座りこんでいるのはベッドの上だった。ふっかふか、しかもキングサイズ。真っ白。煙が完全に晴れて辺りを見渡すとそこはかなり広い家だった。すべて白基調。カーテンから差し込む光に目を細めてカーテンを開けると一気に光が差し込んだ。外はすぐ海できれいな海がきらきら光を反射していた。

「これやっぱ、俺の家、だよなぁ。」

なんでこんな南の島の辺境地みたいな所に住んでるんだろう。しかもこんな拾い家に一人で住んでいるのだろうか?綱吉は?父さんは?母さんは?リボーンは?俺は、

「一人で……」

ベッドから降りてほかの人間がいないかどうかを探る。リビングらしきところへ出ると、暖炉の上にたくさんの写真立てが飾ってあった。そしてさらに後ろのボードに大量の写真。
そこに映っているのは二人の男。一人は茶色の髪にコハク色の瞳。まぎれもない、十年後の俺だ。そして隣にいるのは誰だろうか。とりあえずこの男は見たことがない。白い髪に白い服白い肌。紫色の瞳に左目の下の、これは刺青だろうか?得体のしれない男だが、とにかく二人は仲がよさそうだった。手をつないでいるし、どの写真も幸せそうに笑っている。ボードに張ってあるのは大部分がこの家で撮ったと予測できるものだった。何枚か手に取りその男が移っている場所をゆっくりと撫ぜる。どうしてだろう。知らない男なのに、なぜか愛おしく感じる。そして同時に、限りない悲しみを感じた。

「でも本当に、二人の世界って感じ……」

この男の色と同じようにこの家は白一色だ。食器、ベッド、壁。だが、なぜかその城に包まれていると安心する気さえしてしまう。だがあたりを見渡して穏やかでないものを見つけてしまった。

「これは……」

電話線だった。電話は不通に棚の上に置いてあるものの、ぷっつり電話線がはさみか何かで切られてしまっている。かろうじて電源は入っているが、その表示を見て俺は思わず目を疑った。

「留守電34件……」

しかも全部同じ番号からだ。ためしに聞いてみようかと一番新しいものを選択した。漏れてきた声は聞いたことがない、若い男の声だった。

『もしもし、吉継くん?今、そこにいるんだろう?綱吉君やボンゴレの人たちにはその家の場所は教えてない。心当たりがあることも言っていない。でも、吉継くん。君が逆蘭さんを大切に思っていて、愛していたのも知っている。……彼を殺したのが十年前の綱吉君だということも事実だ。でも、綱吉君は、家族だろう?一回でいい。合わなくてもいいから、彼とちゃんと話してみてはくれないかい?ツ――――――――』

「………」

あの男は、白蘭というのか。俺は、あいつを愛していて、でも綱吉がボンゴレが、あの男を殺した。それが、未来で起こったこと?

「………」

海辺へ出てみた。ここはたぶん海外だろう。時差があるのかたぶん今が夜明け。地平線からまぶしいほどの光が漏れている。なぜだろう。みたことがある、と思った。でもなぜだろう。何かが足りない、と思った。

【綺麗だな――。】
【吉継クンのほうがきれいだよとか言ってほしい?】
【ばかじゃねえの!】
【……吉継クンのほうがきれいだよ。】
【……ばっかじゃねえの………】


俺が、綱吉を裏切ったんだろうな。
綱吉はわけなく人を傷つけるような奴じゃないし。たぶん白蘭が悪いやつで、白蘭が生きていたら世界が終ってしまうような状況に未来は陥っていたんだろう。だから、だから仕方なく。


「…………」


幸せ、そうだ。
写真の中の俺は、なんて幸せそうな顔をしているんだろう。少し頬を赤らめて、目を細めて、バカみたいに笑ってる。それは白蘭も同じで、それともこの白蘭の笑顔も、嘘なんだろうか。

そうは、どうしても思えない。


どうしてだろう。涙が止まらない。

白蘭がたとえどんなに悪いやつで、どんなに卑怯な奴で、どんなに綱吉の敵だったところで、俺は白蘭を思うことをやめられない。

どうしてだろう。彼を愛したのは、俺じゃない。十年後の俺なのに。俺には、彼の墓を見て泣くことなんてできないはずなのに。

どうしてだろう。涙が止まらない。

俺はこの家で何を思いながら暮らしているんだろう。彼がいないこの白い大きな家は、一人で暮らすには少しおおきやしないか?彼がいないこの広すぎる世界は、一人で生きるにはつらいこともあるんじゃないか?

あぁ、でも。きっと俺にとって彼がいない世界は、生きるべき世界じゃなかったのかもしれない。
いっそ、

「……っ」

俺に、綱吉を責める資格なんてないのに。
俺は、綱吉に攻められる義務があるのに。

あぁ。俺は本当に、白蘭を愛していたのか。
だからこの白いさびしい家で、生きていけるのか。






ぽんっ。
間抜けな音。ヘビーな内容だった割にその音は不釣り合い。二枚どうしてもほしくてもらった写真はポケットの中。流れた涙はぬぐったし。あとくされなく未来にばいばい。

「吉継!?」
「あ、綱吉。」

入れ替わった先は最初の学校じゃなくて家になっていた。なぜか俺はまたこっちのベッドにいて、もしかしたら向こうの俺はずっと寝っぱなしだったのかもしれない。

「ね、吉継。吉継は未来でどこにいたの?」
「ん――。よくわかんないとこだたなぁ。なんか着地したときに頭打ったみたいでさぁ。しばらく気絶してたんだよなぁ。おれも興味あったから探りたかったけど、時間切れで無理だった――。」
「へ、へえ。そっか。」

あからさまに残念そうな顔すんなよ。
俺が何にも知らないと思ったら大間違いなんだぜ。
今回の十年バズーカの時間が五分以上だった理由、俺が知らないとでも思ったか?

「ごめんな――。」

お前らに、俺とあの人の生活は邪魔させない。
俺はお前らを裏切らない代わりに、俺はあの人も裏切らない。







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あああ―――。よくわかんない話になったぁ……。
吉継は未来で白蘭の恋人だったんですよ。
ていうかまあ吉継は炎も超直感も弱くて後継ぎ候補から外されてたんですね。それで彼の初恋の人(女)も綱吉のほうを好きになっちゃうし、親友だった山本は綱吉のほうが仲良くなっちゃうしで、劣等感に苦しんでいたわけです。
それを白蘭さんは「綱吉じゃなくて」吉継を愛してくれて吉継は白蘭をすきになっちゃったみたいな複雑?な話があるんです。


20110812



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