俺の大切な親友
『吉継より俺の方が大切だったってわけ!!?』
違う。
ずっとそうだと思ってた。そのことでずっと悩んでも来た。それなのに、そう言葉にされた瞬間、違う、と瞬間的に思った。ずっと、そうだと思っていたのに。
親友だった。中学一年生で、席が隣になった吉継。同じ運動部ということもあってすぐに仲良くなった。勉強が良くできる吉継に、いろいろ教えてもらったこともあった。自他ともに認める、親友、という立場にオレは入れたと思う。部活が無くて休みの日は、吉継とよく遊んだし、何かと言えば、すぐに吉継に話しかけていた。
けれど、いつからだろう、多分、ツナに命を救われた瞬間から、自然と優先順位がすり替わってしまった。ツナに命を救われた瞬間から、俺の中で、ボスはツナで、一番大切な守らなければなら無い物はツナになった。恩を返さなきゃあいけないと、どこかで思っていた。
吉継は優しかったから、とてもとても優しかったから、俺が気付かない俺自身の事にもきっとよく気が付いていたから、きっとずっと、無意識のうちに我慢をしていたんだと思う。それは俺のことがあるずっとまえから、家族とか、友達とか、きっとずっと、我慢していた。
それに、俺は気付けなかった。
「馬鹿だなぁ。」
親友のくせに。吉継のことが大好きだったくせに、彼の優しさに甘えて新しくできた大切なものに夢中になって、吉継はどこにもいかないだなんて、驕って、不安に思ったことさえなかった。
オレ、いろいろ悩んだんだぜ。ツナと吉継どっちにボスになってほしいんだろうとか、どっちも大切だけど、もしどちらかを取らなきゃならなくなったらとか。ボンゴレっていう組織を意識しだした時から、いろいろ馬鹿なりに悩んだんだ。
こたえは出さないつもりだったけど、出したくないって思ったけど、俺は、吉継が自分にとってどれだけ大きな存在か、それに気が付けなかったんだよ。
いつからだろうな、一緒にバッティングセンター行かなくなったし。
勉強も教えてもらわなくなった。学校が終わると吉継は図書館に行って勉強して、休みの日は独りでスポーツセンターで体を鍛えていた。
「馬鹿だなぁ……」
一緒にいるときだって、少し一歩離れて笑ってばっかりで、今思えば寂しかったのかなあ。
なんでなくなってしまってから気が付くんだろう。
吉継のことが純粋に大切だったんだ。親友だったんだから。
その大切さが、いつのまにか当たり前の物になってしまって、それで、無くなってしまってもいいのかもしれないなんて。なんて愚かなんだろう。
吉継は、空気だ。
それは俺にとっても雲雀にとっても獄寺にとってもツナにとってもボンゴレにとっても。あるとその大切さに気が付けない。
なくなってしまった時、おれたちは、どこにも行けなくなるんだ。
「ほんとに……」
なあ、白蘭。
俺たちはお前と戦わなきゃいけない。
でも、俺はお前から吉継を取り返そうなんて気にはならないんだよ。
なあ、お願いだ。
「馬鹿だなぁ………」
吉継を、愛してくれ。
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