可愛いわがまま
 

最近吉継君は我儘というものを覚えたらしい。

「ハワイ行きたい……」

今日は観光特集の雑誌を眺めながら楽園に行きたいと言い出した。

「………ハワイー?」
「うん。」
「暑いじゃない。」
「今冬だから涼しいよ。」

それでも僕が渋った顔をすれば隣に座った吉継君は体重を僕の方へ倒しながら雑誌を僕の顔の前に突き出した。
そこには楽園の名にふさわしい碧い海とヤシの木がとても美しく映っている。

確かに魅力的だ。

「ハワイ……。」
「……わかったよ。じゃあ来週くらいね。」
「ほんとか!?」

目を輝かせて笑顔になる吉継君はかなり魅力的。ここへ来る前とはずいぶんと印象が変わっている。前はもっと大人っぽい物静かなイメージだったから。

「家でも建てちゃう?」
「こういうのは旅行だから楽しいんだよ。」

そういってわくわくとした顔で旅行雑誌をぱらぱらめくっていると正ちゃんと回線がつながった。部屋に戻っていてというと吉継君は素直にソファから飛び降りた。パソコンを開くとまた胃が痛そうな顔をした正ちゃんがいた。

「どーしたの、正チャン」
『どうしたのじゃないですよ!ちゃんといつでも回線つなげるようにしてくださいって言ってるじゃないですか!』
「あぁ、ゴメンゴメン。僕らもお楽しみ中だったから。」
『白蘭さん!!』

へらへら笑い飛ばせば正ちゃんは本気で怒ったように声を上げた。どうやら正チャンも正チャンで本気で焦り始めているらしい。ま、そりゃそっか。味方のボス補佐が僕の物になっちゃったわけだし。

『白蘭さん、本気ですか?』
「吉継クンのこと?本気だよ。」

当たり前でしょ、と笑う。正ちゃんの表情がぴしりと一瞬固まった。僕が遊びで彼と付き合っているのを期待したらしい。ざーんねん。僕は君の思い通りにはならないよ。

「僕さぁ、彼のこと本気で好きだからね。だから、ボンゴレをつぶさなきゃいけないんだよ。」




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