君が好きだから
 


「マシマロ〜」
「ましゅまろ、な……」

横でふにふにと白い物体を指でいじる男の考えていることは何一つわからない。俺の訂正にも構わずに一通りましゅまろをいじり倒してからぱくりと口に入れてやんわりと幸せそうに笑う。

「おいし――。」
「……そりゃよかったな。」
「食べる―?」
「……いい。」
「そう?」

俺がまたそっけなくつぶやくように言う。白蘭はまたふにふにふにとましまろをいじってぱくりと食べた。……あ、違うましゅまろだ。

何十分たってもふにふにとましゅまろをいじって幸せそうに食べる様子は変わらない。

「ん?どうしたの?」
「………、」

きゅ、と左袖の裾を引っ張ればましゅまろに向けていた視線をこちらへ向けた。

「……ちょうだい。」
「?ましまろ?」

こくりと頷けばふふ、と笑ってにゅ、っと俺の顔の前にましまろを突き出した。

「あーん。」
「……」

ぱくりとマシュマロを咥えるとよしよしと幼子を抱くように俺の頭を何回か撫ぜた。
それがどうにも心地よくてましまろをもぐもぐしながらゆったりと目を閉じた。





眠ってしまった吉継君を膝に寝かせて髪をいじっていると後ろにレオ君が立っていた。おさえきれない殺気がまっすぐ僕に向いていた。

「レオ君?どーしたの?おしごと?」
「……、いえ。入江様が回線を繋ぐようにと。」
「そう?正ちゃんもうるさいなぁ。」

見せつけるようにちゅ、と吸い付くように吉継君の額にキスすると少し動揺した空気が伝わった。ほんとにレオ君はおもしろいなぁ。

「……で?ほかに何か?」
「……あと、吉継様の容体もこまめに伝えるように、と。」
「ふぅん……。それもわかった。じゃ、もう下がっていいよ。」

後ろを向いたまま手を振ればすぐに部屋を立ち去ったのが伝わった。

安らかに眠る吉継君の目は閉じられて顔は白く痩せてしまっている。
その頬を軽く撫ぜると少し声を出して身じろぎした。

「ん、……つ、……」

寝言にしてはぼんやりとつぶやかれたその一文字。その一文字目がいったい何を指すのか僕は知っている。

だからこそ僕からこの子を取り上げようとする彼が、憎くて憎くて憎くて、殺したくて仕方がないんだよ。




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