消してあげるよ
 

「おはよう、吉継クン。」
「………」

吉継くんは目を覚ましてもずっと無言のままだ。僕を選んだくせに冷たい目で僕を見る。体を起こしはするけれど、ベッドからおりはしない。それが多分ボンゴレを裏切った吉継君のせめてもの現実への抵抗なんだと思う。
僕に抵抗することで、自分は僕に"とらえられている"と認識することで安心している。

「そろそろ一緒にご飯食べようよ。」
「…………」

無言の抵抗だ。ため息をついて腕を軽く掴んで引くと、だらんとその腕は力なく垂れていたが、何度か腕を引くと思い切りふり払われた。
顔は俯いている。

「……帰して。」
「………」
「………」
「……選んだのは君だよ。」

ぽつりと小さな声で言った吉継君の腕を強く引いた。

白い薄い掛布団が宙を舞って目を開けば吉継君がひどく怯えた顔でこちらを見上げていた。琥珀色の瞳が目いっぱいに開かれその瞳は僅かにうるんでいた。なにも食べていないせいで肌は不健康なくらいに真っ白でベッドに押し付けた腕も少し細くなっていた。

「選んだのは君だ。」

ぽろりと、吉継くんの大きな瞳から、透明で綺麗な涙が流れた。

「オレ、オ、レ…、ツナを……、」
「……君はさ、今僕が帰っていいよって言ったら、ボンゴレに戻るのかな?」

そういえば吉継君は耳を両手でぎゅ、と抑え込んで小さく、本当に小さく、帰らないよと言って首を振り、そのあともっと小さな声でやめて、と言った。

「ごめんね、試すようなことして。」
「……ッ」

堰を切ったように泣き出した彼は僕にすがるように服にしがみ付いて泣き始めた。その背中を赤子をあやすようになぜていればしばらくして再びすぅすぅと穏やかな寝息を立て始めてしまった。

「で?なにしてるのかな、レオくん。」
「あっ、す、すみません!えっと、入江様からご伝言が……」
「あぁ、そう?ありがとう。」

吉継くんをもう一度ベッドに寝かせて部屋から出る。レオ君はしばらくじっと吉継君を見つめてから僕の後をついてきた。

馬鹿だなぁ。大切なものを奪われてから取り返しに来たって仕方がないのにね。そんなの解りきったことなのに、どうして君たちはそんなに愚かなんだろうね?




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