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私は馬鹿だ。もう今となっては自他ともに認めている。馬鹿だしあほだしドジだ。どれだけ注意を凝らしても、どこかで失敗する。それが私だ。そう。そして私は今東京に着いたもののありえないくらいの時間迷っている。その上携帯は充電切れだ。
「……はぁ。」
馬鹿だバカだと言われ続けてもどうしてもこのバカは治らない。なんでだろう。母の子宮にいろいろ落としてきたんだろうか。
「あ、ここ見覚えある。」
でも父の家のそばではなかった気がする。
でも、結構前に、ここを通った覚えがある。
『さよなら。』
「……あぁ。あそこか。」
そうだ。そういえばあの草原まがいの所がこのあたりだったのかもしれない。斎藤さんが現れ、そして消えて行った。嫌な場所だ。早くここから立ち去ろうと思った瞬間、右腕を誰かに捕まれた。
「あき!!」
「あ……、お父さん。」
「まったく、お前はよく迷うな。見つかってよかった。」
どうやら私が迷うのを見越して早めに待ち合わせを定めていたらしい。なんて計画的な人なんだ。
「ほら、こっちだ。」
「え、家じゃないの?」
「会場はこっちなんだ。早くいこう。」
立ち去ろうと思ったのに、どんどん草原に近づいていくのがわかる。
あれから肌身離さず持っているペンダントが少しずつ熱を持っていくのがわかった。
「……。」
何事もない、あの草原の前を通り過ぎる。
あの時とまるきり変わらない。緑の青々とした草が一面に広がっている。
そこにあの日の斉藤さんが見えた気がして、気のせいだと頭を軽く振る。
いるわけが、ない。
いていいわけが、ない。
あの日、彼の手を放したのは紛れもない自分なのだから。