俺のともだち

「よっ。」
「……おしゃべり。」

居候させてもらっている身だが、のんびりと縁側で寝転がっていると、照っていたはずの日の光だけが陰り目を開けると垂れている黒い髪が鼻をくすぐった。

「徳兵衛、髪切れよ。」
「まあまあ。で?おしゃべりってなんのこと?」
「椿さんのこと、あやめさんにしゃべったろ。」
「あー…えへへ。」
「えへへじゃねえよ。」

徳兵衛は隣の蕎麦屋で奉公している同じ歳だか一つ上の男だった。黒髪を長く伸ばして顔はそこそこ整っている。俺の言ったとおり、あやめさんに椿さんことを話した男だ。
片手をあげて苦笑いする徳兵衛の頭を軽く小突き、結われた紙を少しひっぱる。

「わりいわりい。問い詰められたらしゃべっちまってよ。」
「っざけんなよー」
「で?そのあやめさんとこに新選組といったって噂はほんとか?」
「……お前の情報網はすごいな。」
「まあな。で?」
「ほんとだよ。夜道で酔っ払いに絡まれて助けてもらったんだけどなんかめんどくさいことになっちゃって。」
「ふぅん……」

つまらなそうに髪をくるくるといじりながら言う。自分で聞いたくせにまったく。

「お前さ、遊郭は行ってんのか?」
「ウン…まあね。」
「へえ、じゃあ童貞は卒業したんだ。」

少しツンとした印象がある言い方でいう。どこか不機嫌そうだ。あやめさんが怒った時に似てる。

「いや、してない。」
「はぁ?太夫に相手してもらってんだろ?」
「うん…でも俺別に椿さんのことそういうのあれなわけじゃないから。」
「指示語多すぎ。」

今度は笑いながら徳兵衛が俺の頭を小突いた。機嫌が戻ってる。なんなんだこいつ。なぞい。



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