なんとかなった?
「じゃあ、あき。行こうか。」
「フラグ折れてない!?」
「ふらぐ?なんだそれは。とりあえず屯所に行かねばなるまい。」
「な、なぜに!?」
「まあ、それはおいおいだ。原田、俺はこいつを連れて行く。場所を言ってもひとりで行けるほどの脳がこいつにはないからな。」
「ぎゃん!!」

目の前にいるのは普段から親しくしている仲間と、得体のしれない斎藤と同じほどの背丈の男。男は初めて見る顔だったが、頭の弱そうな雰囲気が滲み出ていた。……かわいそうに。男と斉藤は大分仲が良いらしく、話しなれた様子で屯所の方向へ歩いて行った。
まるで恋人同士のように仲睦まじく笑いながら夜道を歩く二人。

横を見るとさっき切った男の見開かれた瞳がこちらを向いていた。

「切ないな……」

なに、この温度差。処理俺一人でやれってか?というか、斉藤。お前は死体の処理担当で俺と一緒に行けと命令されたはずじゃなかったか?

「切ない……」

そういえばあの男女の所に行くって言っていた気がする。俺はもうしばらく島原なんてご無沙汰だ。
とっとと処理してあの男に文句を言いに行こう。



「で?そいつがお前のいとこで?目撃者?」
「いえ、見てはいないようですが。」
「ほんとか?」
「斬る瞬間は見てないです。ぐろいの見せられてむしろ被害者です。心に一生消えない傷を負いました。」
「そうか。じゃあ、帰っていいぞ。いいか、まっすぐ、家に帰れ。」
「あ、でも俺あやめさんとこ行かないと……」
「そうか。偽証で切腹。介錯は俺がしよう。」
「折れてない!?」
「心に傷を負った様子は少しも見受けられない。」
「副長!見逃してやってください。こいつは少し頭が足りないだけなんです。」
「ひどい!」
「あはは、一くんがそこまで言うなんてよっぽどその子馬鹿なんだねぇ。」
「うるさい!」

大事そうに抱えられた漆塗りの草履はどうやら彼の恋人の物らしい。届けてくれとせがまれた道中左之さんに出くわしたらしい。馬鹿なだけじゃなくて運も悪いらしい。

「でも、あやめさん機嫌損ねると怖いんだよな……」
「じゃあ、僕が一緒に行きますよ。」
「いや、俺が行く。」
「いいって。左之さんが処理ほっぽって帰ったから怒ってたよ。」

一くんの申し出を遮って自分が行くと申し出れば彼、あきはあからさまに嫌そうな顔をして顔を歪めた。どうやら僕が苦手らしい。失礼極まりない。

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