なんてこったぁあああ
「いやいやいやいや、ちょっと待って。こんないたいけな少年を殺すなんてあんたいけませんぜ。不殺生不殺生。」
「あいにく仏教は信仰してないもんで。それに見たところあんた、いたいけとは程遠いな。」
「そんな!」
槍を持ってじりじりとにじり寄ってくる赤い髪の人はどこか楽しそうだ。殺人を楽しむなんてなんて男だ。イケメンなくせに!
「いやいやいやいや。」
「いやいやいやいや。」
「いやいやいやぁ――お・そ・わ・れ・る――!!」
「誤解を招くようなこと言うんじゃねえ!!」
「いやぁあああ!!」
「……おい、どうした?」
俺が槍を向けられて後ずさりしていると後ろから静かな声がした。
「斎藤!」
「……斎藤さん?」
「お前……あきか?」
なんてなるはずもなく俺が呼びかければ斎藤さんは思い切り顔をゆがめて、
「誰だ、貴様は。」
ときたもんだ。
「いや、多分見られちまったていうか。本人は見てないっていうんだけど。」
「ふむ、副長に判断を任せるか……」
「斎藤さん忘れちゃったの!俺だよあきだよ!」
俺がそういって泣きつけば少し驚いた顔をしてそのあと冷静に返された。
「お前……あきのことを知っているのか?」
「だから言ってるじゃん!!俺だよ俺!!」
「馬鹿者。あいつは多少品性にかけるが百歩譲って一応女だぞ。間違っても男なわけがあるか。」
「いや、ほんとに!あ、そうだこれ!斉藤さんがくれたんじゃん!!」
「……それは!まさか本当に!」
「そうだよ、斎藤さん!やっと会えたぁあ!」
「……あの――。知り合い、なのか?」
「あぁ、紹介しよう。俺の……」
「俺の?」
「俺の…」
「……」
「……俺のいとこのあきだ。」
「いやさっき誰かわかってなかっただろ!!」
「気のせいだ。」