なんて……こった
その夜。俺は町を歩いていた。なぜこんな夜の街を歩いているのかと言えばまたあの子が俺を誘うために草履を壊して家まで届けてくださいなどと言うから仕方がなく夜道を歩いているのである。

「……あーぁ。俺そのきないのに…」

ちゃりちゃりと首に掛かったペンダントの鎖をいじる。夜道は人が少なく閑散としていた。提灯を持っていてもやはり怖い。早く家に行って草履返して帰ろう。

「あーぁ、川の流れのよーにーぃ?」

「――――!、――。」
「―――!」

声がする、と思って道の角を曲がるとそこにいたのは赤い髪の人だった。長い槍を持っていて、その隣にはあら物騒な死体が……

「うええええええぇ!!??」
「!?お前何者だ!?」
「な、何者って、えええええ!?銃刀法違反ですよ!!」
「……なんだそれ?」

こちらに物騒なものを向けてくる男の人はあら別嬪。だけど横の死体はちょっといただけない。

「お前、なんでこんなところにいる?」
「え、えっと、草履を、届に…ですね。我儘なお嬢様が、届けろっていうから…」
「女ってのは面倒なもんだからな。」
「そうですね。」

両手を頭の横に挙げて呆然と立っている俺と槍を向ける男が世間話。異様な光景だ。

「今の……見たか?」
「今のっていうか……殺しちゃった感じですか。」
「その通りだな。」
「犯罪ですね。」

俺がそういえばきょとんとした顔で男は俺を見た。そして槍を下した。くい、と右腕を引いて俺に浅黄色の羽織の背を見せた。

「……それがなにか?」
「……俺がなんなのかわからない?」
「人間ですか?」
「いやそうだけど。」
「………え?」
「……新選組って知ってるか?」
「……えーっと、あぁ――ッ!!」

そうだ、新選組!いつか斎藤さんに会えるかなあとか思いつつ浅黄色の羽織にちらちら視線をやっていたものの、なかなか斎藤さんには会えないし仕事は忙しいしで、すっかりその存在を忘れてしまっていた。

「あぁ、はいはい!知ってます!」
「そんな嬉しそうに言うやつも珍しいな。」
「あぁ、新選組の人ですか!なるほど。」

そしてよくよく彼の横の死体を見る。浅黄色の羽織を羽織っている。そして目の前に立つ彼を見る。こちらに槍を構えなおしていた。

「……もしかしなくても。」

これって死亡フラグ?




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