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大八さんが主人、その妻、お光さんが女将として経営される飴屋、手鞠堂があるのは江戸の町人の街並みの一角であった。飴細工は綺麗で美味い。そして高価だった。客が来るのはまれで、普段来たとしても飴ではなく砂糖細工を買っていくのが殆どだった。

俺、あきがそこに用心棒として居候させてもらうこととなったのはつい三か月前のことであった。

俺、というか、私が現代から江戸に来た時の記憶はなきに等しい。手鞠堂の女将さん、お光さんが俺が道に倒れているのを見つけたらしい。しかも現代の服を着たままだ。男の姿でスカートをはいていたなんて一生の恥だ。
俺を拾ってから五日後、おれは手鞠堂の二階の客間で目を覚まし、そして混乱の叫びをあげることになった。
ここはどこ、来ている服は、そして足と足の間にブランブランしているものはなんだ。

しかし馬鹿な俺にしてはすぐに状況を把握できたらしく、現代からきただとか、本当は女であるだとか、頭がわいたと思われるような発言はしないで済んだ。

お光さんの話からここが江戸であることが分かったから、田舎から出てきたのだが、途中で強盗に誘拐され、それからの記憶がないという設定にしておいた。記憶喪失って便利。

外来語は使わないよう心掛けたし、男であろうと心掛けた。

しかし、どうやらこのあたりにはかっこいい男というものがいないらしく、そこへ来た俺に女子が群がるようになった。大八さんは面白がるし、というかあの人俺を遊郭に連れて行こうとするし。

俺、女なのに。




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