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いろいろと終って人が一通り引いた後、父がその辺を歩いていきなさいと私にお金を少し渡していった。300円だった。いくらなんでもそこまで子供じゃないぞ。

会場を出て一人プラプラしても面白いもんなんて何にもない。昔あんなにあこがれた東京ってこんなもんだっけ。これだったら島のほうがずぅっと面白い。

「……あ。」

プラプラ歩いていくとあの草原の前に立っていた。ずいぶん歩いたんだな、と思いながらその草原の中に分け入る。

「あ――…」

そうそう。そういや此処でお別れしたんだっけ、と感慨深く思いながら灰色のどんより雲が経ちこもった空を見上げる。

斎藤さんのことは今でもよく思い出す。
思い出そうとすればスレほど記憶の中の斉藤さんは鮮やかに私の記憶に刻み込まれた。

美しかった。かわいかった。強かった。たまに厳しかった。怒ると怖かった。

まだ見ぬ土方さんとやらに嫉妬したこともあった。

「あい、……は一生モノじゃないの〜」

漏らそうとした言葉を無理やり歌でごまかした。

『あき、きっとまた会える。』

「……無責任だよ、斎藤さん。」

あんたがそういうこと言うから、私忘れられないで期待してるんだもん。

「……会えるわけないじゃんよ。」

別の世界の人なんだから。
あんなの、たまたま会えただけの人なんだから。

会えるわけないじゃん。
つーか、あえていいわけないじゃん。
斎藤さん江戸時代の人。
私何百年もあとの人。

会えちゃ、だめなんだよねえ。

「……会いたい。」

それでも、会いたいんだよ、斎藤さん。

こんなぬくもりだけ残して、どっか行っちゃうなんてあんた卑怯だよ。




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