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私は太夫になった。
「貴音でありんす。」
太夫になって初めてのお客は幕府の新選組の方々だった。
「へえー。お前が新しい太夫かぁ。綺麗なもんだなぁ。」
「どうぞよしなに。」
にっこり笑えば手招きされお酌を命じられる。そばにより赤みがかった髪の男の猪口に酒を注げば、そこからはずっとそれの繰り返しだった。
「土方様。どうぞ。」
「……ん、あぁ。わりぃな。」
男、原田様に言われ窓際でぼーっと空を見ていた黒髪の土方様に猪口をわたしお酒をを注ぐ。
「死んだのか。」
「えぇ。」
「怖くはないのか。」
怖いものか。掟さえ破らず媚を売ることを拒まず外を夢見ることを諦めれば、こんなに甘美な場所はない。
「外を、諦められるのか。」
「諦められるものですか。」
「つらいだろう。」
「つらいものですか。諦めましたもの。」
外を夢見ることなんて、遊女にとっては何にも代えられない娯楽だ。諦められるわけないと、諦めて割り切るの。
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20111214