朝の話



朝起きるとまぶしい光が眼に痛かった。カーテンが少し開いている所為かも知れない。外気のせいで肌寒い。タオルケットを肩まで引っ張ると少し緩和された気がした。

「……ぐえ」

いきなり首のあたりに腕を回され横の誰かに引き寄せられた。腰のあたりに手が回され中途半端に伸ばされた髪が長い指で弄ばれた。

「……はなして」
「なぜ?」
(なぜって……)

ちゅ、とこめかみあたりに唇が寄せられた。いやだと首を振ると今度は首筋に強く唇を押し付けられた。腕の力も少し強くなる。避けるように頭を上げればまた目に光が入ってちかちかした。

「学校行かなきゃ……」
「いいじゃないか、学校ぐらい。俺はほとんど行かなかった。」
「それはあんただからだろ……」

そろそろいかないと本気で遅刻する。そして何よりこれ以上学校行かないと留年してしまうかもしれない。さすがに留年したら家を勘当される。

「いいじゃないか。ここで暮らせば。」
「……あほか。」

いつだったか何回目かに海へ行った帰り、この家へ案内された。海辺の大きな(でもこの金持ち科学者からしたら大きくないのかもしれない)白い別荘に通された。最初に来たときは生活感がまるでなくて、ただ白いきれいな家だった。バルコニーからは海が見えるし、朝日も夕日も拝めて、周りには民家も何もなかった。なんて最高な家だろう。でもここに兎吊木と二人で何の当てもなく暮らすのはなんだか嫌だった。

兎吊木が嫌というわけじゃないけれど。

「いやなのか?」
「嫌っていうか……まあ、それも、いいかもね…」
「じゃあ行かなくていい。」
(いや、よくはないんだけど……)

冷たい腕に抱かれ窓からさす光に目を細めていればだんだんふわふわと微睡に意識が沈み再び眠りの底に落ちて行った。


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