海の話

「海、好きなのかい?」
「なに、意外だとでもいいたげだな。」
「まさか。よく似合う。」
「嘘だろ。」
「あぁ、そうだね。」


そういうあんたも海、好きなのか?なんか焦がれてるっぽい顔してるぜ。そう思ったけど聞かなかった。言ったら、何かに気づいてしまう気がして。

「未徳。」
「なに。」
「君は海が好きか?」
「あぁ。」
「……俺は」
「……。」
「俺は青が好きだ」
「へえ……」

好き?そんな生暖かい言葉じゃあんたのその気持ち、言い表せないんじゃねえの?もっと重くて、狂おしい、好きなんて陳腐な言葉では言い表せない、いや、どんな言葉でも言い表せないような気がする。

「………。」

兎吊木の顔が近づいてそして離れて行った。
俺の頬に添えられたあいつの手はとても冷たかった。

「どうしてだろうな。」
「…なにが?」
「君に惚れる要素なんて、ないのにね。」
「気のせいなんじゃねえの……」

もう一度兎吊木の顔が近づいて今度は俺の体に腕が回され強く引かれた。そこまで近づいて初めて俺とあいつの身長に大分差があることに気が付いた。

少し身じろぎすると腕に込められた力が強くなった。
兎吊木と同じようにやつの背中に手を回すと再び顔が近づいた。

「ん、…」
(こいつのキスしつけぇ……)

軽く奴が来ている白衣を軽く引っ張ればいったん口は離れたけれどすぐにやつのしつこすぎる求愛とも取れる行動は再開された。

「まじ、しつけぇ、って……」
「いいだろ、このくらい」
「このくらいじゃねえよ、これ…」

そういえばようやくキスは終わり体が離され手が引かれて車へ戻ることになった。助手席に座るとまたせきを切ったかのようにキス。
さっきよりも、ずっと激しく。

「ん、ぁう…、やだ、って…」

よだれが顎を伝う。それを兎吊木が舐めとり今度は頬、目じり、額に唇が移動した。

(あぁ、恥ずかしい……)
「顔、真っ赤だね。」

せせら笑う奴の顔は今まで見るどの顔よりも妖艶だった。




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