パーティーのお話

俺の自己紹介をしよう。俺の名前は緒方美徳。18歳。そこそこ名のある名家の二男。しかし人格者でキレ者と評判の兄と違い、俺は完璧なる不良だった。灰色に染めた髪に黒のメッシュ。煙草も吸うし免許無しでバイクにも車にも乗る。そんな俺を半ば親たちは諦め始めている。好きなものは煙草と甘いもの。嫌いなものは俺が男であると考慮していない名前にそれからあの変態な俺の知り合い、兎吊木垓輔。

「やあ。」

ひらひらと手を振っている白衣を着たあの変態を睨みつけて前を通り過ぎる。
この男に出会ったのは半年ほど前のある財閥によって行われたパーティだった。一応下っ端でも由緒正しい家計の俺の家でも普通に参加した。普段は参加することを勧められなかった俺だったが、何故かその時は大きなパーティだったせいか二男の俺も参加させられていた。とにかく話すなと言われ黒い髪のカツラをかぶせられスーツを着せられた。
主賓のあいさつのときに不意に煙草が吸いたくなって兄の目をかいくぐってパーティ会場からこっそり出た。そう、それが間違いだったんだ。
外の冷気に少し身を震わせて煙草に火をつけたところでしばらく前に人がいることに気付いた。白衣に灰色の髪、緑色のサングラス。代わった出で立ちだが背が高く足の長さが妙に際立っていた。

『おや、緒方家の二男くん。こんなところでどうしたんだい?』
『あんた……誰だっけ?』

無礼に問えば兎吊木は苦笑の様な笑みを浮かべて此方を向いた。

『うわさ通りのようだね。さっき一応挨拶したんだけど。』

そういえばこんなやついたかもしれないと記憶を掘り返しても目の前の白衣の男は記憶にはなかった。空気を呼んだのかもう一度含み笑いの様な笑顔を浮かべて奴は言った。

『俺は兎吊木垓輔。科学者。』

そういえばどこかで聞いたことがある。というか相当名のある世界的な科学者ではなかったか。このパーティにも来ていたのかと僅かに心の中で驚いて煙草を口から放して息を吐いた。
それからだ。この悪魔のような男が俺に付きまとうようになったのは。

『やあ、美徳。』

学校から帰ろうと思ったら校門に兎吊木がいる。朝学校へ行こうと思えば家の前に兎吊木がいる。目を開ければ兎吊木がいる。頭を上げれば兎吊木がいる。

「お前いい加減にしろよ……なんなんだ一体……」

もう怒鳴る気力もなくなってきた。肩に手をまわして馴れ馴れしく車へ誘導する男。たしかに傍から見ればいい男だろう。背も高い。容姿も良い。スタイルも抜群。俺が女だったらもろ手を上げて喜ぶんだろうが、生憎俺は男だ。
「別に。俺が君を気に入ったからこうして一緒に出かけてる。それだけさ。」
そのお前にとってのそれだけが俺には迷惑なんだよ。

「大体美徳ってよぶなっつったろ!!俺はみのるだ!!」
「何言ってるんだい?親からもらった名前を勝手に解明するんじゃない。」

一番親不孝そうなお前から言われたくねえよ。
もうつっこみを口に出すのも着かれてきた今日この頃。抵抗することが意味をなさないと分かった今俺は抵抗をやめて普通に兎吊木の車に乗り込む。抵抗するとどさくさにまぎれてこいつは変態になるから。

「どっか行きたいところとかある?」
「海。」
「今冬だけど。」
「海が良いんだ。」

こいつと話す時俺は頑なになる。なにも譲りたくなくなるんだ。ちゅ、と頭にキスをされて耳元で男は了解、と小さく行った。
それさえももう慣れてしまった。完璧に絆された俺も大概狂ってる。



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二次元的No.1兎吊木さん。
短編から昇格。


20111018


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