02


「グララララララ!!!! エース! おめえ人形遊びするようになっちまったのか?!!」


でっかいいいいいいい!!


なんだ、このデカさ!
山? こんなデカい人間って世の中に存在するの?!! 
いや実際に目の前にいるけど、すっごいいいいい!!!
声の大きさにビビって両手で耳を塞いでも殆ど意味がない状態だ。


「オヤジも勘違いしてる…」

「そりゃ当たり前だよい。誰もそんな小人見た事ないんだから勘違いして当たり前だ。」

「ねえ、どうやって挨拶したらいいの?」

三人でボソボソ喋ってたけど、オヤジさんがこっちを見て。
私と目が合った?から、手を振ってみた。
途端に目を見開くオヤジさん。

「おい、エース。その人形今動いたぜ。」

「オヤジ、人形じゃなくて人間なんだ。なんか縮んじまったらしい。」

安定感が悪いけどエースの掌で立ち、頭を下げて挨拶をする。

「初めまして、こんにちは。×××です。」


しーんとしてる。

…挨拶失敗した?


「エース。その小っこいの、こっちに持って来い。小さ過ぎて声が聞こえねえ。」


なんだそういう事か。

「解った。×××、動くぞ。」

返事を聞く前にエースが動き出したから、慌ててしゃがんでエースの指に抱き付く。
エースは普通に前に進んでオヤジさんの側により。

「オヤジ、手に乗せるぞ。小さいから気を付けてな。」

「耄碌ジジイ扱いしてんじゃねえぞ、エース! 解ってるわ、グラララ!!」

ひーっ迫力あり過ぎるんだけど、このお爺さんの手に乗り換えるの?
手も在り得ない位でっかい…

そうっとエースの手からオヤジさんの手に移されて。
固くて深く皺がある掌はじんわり温かかった。
ペタン、と女の子座りをしていたけど、掌が上がってオヤジさんの顔に近付いてきたから正座に慌てて切り替える。


そして目の前に超迫力満点なデカイお爺さん、いやオヤジさんの顔が!!!

緊張してごっくん、と唾を飲み込んだら目の前の表情が少し崩れた。


「おめえ、名前なんてんだ?」

「、×××です!! 宜しくお願いします!!」


噛みそうだったけど、何とか挨拶出来たよ!
あああでもすごい見られてるううう


「普通の人間なのか? 小人族じゃなくて?」

「はははい! 気付いたらこんなに小さくなって匣の中にいました! 元の身長は163cmです。」

「エースがおめえを持ってたが、エースに拾われたのか?」

「はい! エースが市場で貰った匣の中から突然私が現れたみたいで…」


オヤジさんの質問に答えるうちに、少しずつ落ち着いてきて普通に喋れるようになってきた。

でっかいから迫力があるけどオヤジさんは別に睨んでもないし、それ処か小さい私に気を使って話をしてくれている。
この皺の多い掌も温かくていいな。


「匣、か。聞いた事ねえなぁ。おめえ程の小人族の話も聞いた事がねえし。」

オヤジさんも私のような例は初耳みたいだ。

少しそこで二人で話していると、下の方からエースの声が聞こえてきた。

「おーい、オヤジ。それで、どうだ?」

「何がだ。」

「×××、俺が面倒見てえんだけど、いいか?」

ふむ、とオヤジさんがエースを見てから私に小声で話しかける。

「おめえ、どうしたい?」

「え?」

「エースが面倒見たいってのは有りだろうが、実際あいつは何も考えちゃねえだろう。
小さくなったからっておめえは女だろ? 色々と奴に気を使ってしまうだろうから、女同士がいいならナース達に声をかけるが?」


は、とする。


全くそんなことまで考えてなかった!

ただ『面倒を見てもらう』と言う言葉だけに頼って、後先何も考えずに迷惑かける処だったよ。
でもエースにも拾ってもらった繋がりがあるし、そもそもこうなった原因がよく解らないから
匣の事もあるし出来るだけ一緒に居た方がいいと思うし。
世話になるのが同性の方が断然いいだろうけど、知らない女性ってのもそれはそれで緊張するものねえ。

うーん、と悩んでオヤジさんに聞いてみる。

「元の原因が解らないので、暫くエースと一緒に居た方が何か解るかもしれないって思いまして。
そんな事でエースにお世話になっちゃ駄目ですか?」

「おめえがいいなら構わねえぜ。」

「はい、お願いします!」

またペコリと頭を下げてお願いして。
頭を上げると楽しそうに目を細めたオヤジさんが、

「エース、いいだろう、許可する。×××はおめえが面倒見ろ。マルコ、×××の生活設備を誰か手先の器用な者に作ってもらえ。
エースはその匣を持って来い。直に見てみてえ。」

「「了解。」」

二人が部屋を出ようとして、エースが振返った。

「オヤジ、×××をそのまま置いてていいか?」

「ああ構わねえぜ。俺達はお喋りを楽しんでるから、気にせず匣持って来い。」

オヤジさんがフッ、と笑ってエースをけしかけた。

「解った!」

そう行って部屋から出たエースを見て、やっぱり私はペット扱いなのでは…?と不安を覚える。

今、置いてていいかって言ったよね?
それってどうなの? 普通、人相手なら残してていいか?だよね。

そんな私の何とも言えない納得のいかない表情を見て、オヤジさんが笑った。

「おめえ、本当にいいのか? 奴は人間の女としてより小動物か何か感覚だぞ?」

「…ちょっと悩みます…」

「まあ、気に入らなければ俺のとこ来い。何とかしてやるから。」

「はい。」


頼もしい。私は選択をもう間違った気がしてきた。
エースでも他の女性でもなく、ここにいるオヤジさんが最大の保護者になってくれるんじゃないか。
この船で一番権力があって、恐らく力も強くて、頭も良くて気も使ってくれて。

うう、いつも選択間違うんだよなあ。


「オヤジさんは私の事、怪しまないんですか?」

気を紛らわす為に話を変えてみる。

「俺が? おめえを? 何でだ?」

「マルコと逢った時に疑われて。…私が誰かの企みじゃないかって。」

グララ、と軽く笑ってオヤジさんが返事をくれた。

「あいつは心配性だからしょーがねえんだ。能天気な野郎が多いからなぁ。あれ位マトモに考える奴がいねえとウチも彷徨っちまうしな。
海賊してると敵がやたらと多いから、仕方あるめえ。」

「海賊かあ… オヤジさん達、強いんですか?」

「ん? ×××はどう見える?」

「強そう! いや絶対強いと思います!!」

「そうか、そりゃ嬉しいじゃねーか。」

再びグラララ!と笑ってから、オヤジさんが真面目に聞いてきた。

「×××は恐がらねえなぁ。俺達が海賊でも。」

「えーっと。多分、まだ実感が湧かないからだと思います。海賊を見て接したのって初めてだから。」

海賊だ、と言われてもお話の中のキャラクター以外知らないから本当に実感が湧かない。
船の人達を見ても漁師には見えないイカちい人ばっかだったし、マルコに出逢った時の様子から漁船ではないだろうとは思ってたけど。

私ののほほんとした返事にオヤジさんが優しく答えてくれた。

「そりゃ平和な世界から来たもんだなあ。良かったな、拾われたのがエースで。酷いのに当たれば今頃おめえは大変だったろよ。」

「その通り、…」

その通りだ。
エースに匣を貰われなければ私はどうなってたんだろう。
あれ、でももしかしてエースが手にしたから私がこっちの世界に呼ばれた、とか?
いやいやよく解らない。

うーん、と考えて面倒臭くなったから考えを放置した。

オヤジさんと話しているうちに、正座もとっくに崩してるだらしのない私は、ついでに身体も横にしてみた。

ゴロゴロ転がる。


おおー掌で転がれるってどんだけ!!


転がってる私を見て、オヤジさんもおめえ何してんだ?、と楽しそうに笑って手の角度を変えたりしてくれて一緒に遊んだ。

そうして転がりまくった後にやっとエースが来て、匣をオヤジさんに渡して私をエースの元に戻された。

オヤジさんは何度も匣の蓋を開けたり閉めたりして、色んな角度から見たりしたけど結局何も答えは出ず。
聞いた事も見た事もない匣のようだった。


「エース、大事に持っとけよ。×××の唯一の接点だ。」

「ああ、無くさないようにする。」

匣をエースに戻して、片手に私、片手に匣を持り両手が塞がった感じになったので、エースに頼んでまた肩に乗せてもらった。


「じゃあオヤジ、一旦部屋に戻って×××の生活準備するな。」

「ああ。」

そうして部屋を出ようとした時に、オヤジさんが

「ナース達に一応聞いてみろ。人形が好きな奴がいるなら服とか助かるだろうしな。いなけりゃ誰か裁縫得意な奴に作らせてやれ。」

と助言してくれ、それにエースが楽しそうに返事をした。

「おう! 解った!!」


オヤジさんもエースも今いないマルコも、突然現れたちびな私の為に動いてくれて助けようとしてくれてる。


海賊ってすごいな。


夢でも楽しい夢だな、これ。

こんなにわくわくする夢ならまだ醒めたくないかも。



そう暖かい気持ちになった。


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