A Perfect World


17(ロー15歳前後)の夢に魘されながらのんびり過ごしてた時あたり。



夕飯を食べてまったりとした時間。

シャワーを浴びて部屋に戻ると×××はベッドの隅で膝を抱えテレビに集中していた。

映画か?

シリアスなドラマものらしく、人形のように固まって見てるから邪魔をせずに着替え、本を抱えてベッドに横たわって。

時折聞こえてくる会話と音を入れながらも本を読み、余りにも×××が集中して画面を見つめているものだから、
本を読むのを止めて自分も彼女の後ろ越しから映画を見る事にした。



―――陳腐だな、阿呆らしい。


つまらん、と思いながら黙って見てるとエンドロールが漸く流れ、と同時に鼻を啜る音。

まさか。

背後から×××を引っ張り、手の中に収めると。


「…泣いているのか。」


目を真っ赤にボロボロに涙を零して。


「いやちょっと! 見ないで!」


泣き顔を見られまいと両手で顔を隠して、恥ずかしそうに顔を背ける×××。
あれでここまで泣くなんて。

抱き締め直して彼女の顎に手をやり、俺の方を向かせた。

「何で? 映画見てそんなに泣いたのが恥ずかしいのか?」

それでも顔を背けようとする×××。

「やだ、もう。」

まだ映画の余韻が残ってるのか、後から後から涙が零れる。

「…もー! 絶対馬鹿にされると思ったから、泣いてるの見せたくなかったのに!」

大粒の涙が頬を伝い、顎から落ちる。

「馬鹿にしてねえよ。泣いたのかって聞いただけじゃねーか。」

俺の言葉なんか聞かずに、ううう、見ないでよー、と項垂れる×××。


馬鹿にはしてねえよ。

ただ、あんなもんでそこまで泣くお前に呆れたのと同時に、湧き出て来た己の対抗心に驚き呆れただけだ。
意とも容易く彼女を夢中にさせて、泣かせる事が出来る映像物なんかに。

阿呆か俺は。
相手は物語じゃねえか。
生物ですらねえ。


「ねえ、恥ずかしいからもう見ないでー。」


涙を手で拭い、顔を赤くして訴える×××。
泣いたから興奮して赤いのと、羞恥で赤くなってるのと重なって真っ赤だ。

×××の頬を自分の着ていたTシャツで拭いてやり、額にそっとキスをした。

俺が離さない事で諦め、大人しく目を瞑ったままの×××の目がゆっくりと開き。

「…笑わないでね。」

恥ずかしげに言う。
何を?、と促すと。

「こういうお涙頂戴の物語は弱いの。泣くの我慢するんだけど、どーしても駄目。決して涙脆くはないんだけど
フェイクだ、フィクションだと解っていてもつい感情移入しちゃって…」

だから涙脆くはないの、と言い張る×××。
泣き虫じゃないんだから、と。


最初に出逢った日に警察署で大泣きし、その後慰められた女達の元でも泣いて。
ついこの間も涙を流したのは喧嘩した時だ。
全て事が事なだけに泣き虫とは思わなかったが。


「笑いはしねえさ。」

そう言うと安堵した表情をし、ぎこちなく微笑む×××。

吸い寄せられるように彼女の唇に口付けをし。



ただ、俺以外の事に夢中になって泣くのは頂けねえなあ、と思っただけだ、



言葉にはせずに彼女の唇を割った。


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