世界はどこかしら柔らかく 2
※世界はどこかしら柔らかくのサッチ視点
ちょっと新鮮な空気でも吸うか、と思って甲板に出たらマルコが居たので、近付いた。
何かどっかを見てる。
「よ! 何してんの?」
「×××とイゾウを見てるよい。」
「ふーん。何か面白い?」
「いや別に。×××はイゾウによく懐いてると思ってな。」
「嫉妬してんの?」
「阿呆。してんのは俺じゃねえだろい。」
ああ、そうだな。
イゾウと×××の仲に嫉妬してるのは我等の愛しい悩める青少年だ。
あっちの世界の”日本”を感じさせてくれるワノ国出身のイゾウに×××が懐くのは、極当然の事だった。
向こうに居た時にテレビで時代劇を見て不思議に思い×××に聞いたら、つい三百年前までの日本はこんなんだったのよ、と
笑って言われて、たった三百年でこの高度文明化か!と驚いて。
高度文明化した日本とはいえ、古き良き日本の文化はこっちのワノ国の文化とかなり似てるらしく、話のネタも尽きないのだろう。
事情を知ってる俺からしたら×××がイゾウに懐くのは極当たり前に感じるし、俺同様あっちに行ってるエースも理解してる筈だが
まだまだ若いエースは、恋愛抜きでも他の男に夢中になる×××に我慢が出来ないようだった。
どう見ても普通に懐いてるだけなんだけど、それすらも駄目なんかねえ、と皆でよくネタにしていた。
楽しそうに笑ってる二人を見てると、ジョズやビスタもやってきた。
「二人して何してる?」
ジョズが聞いてきた。あら、俺と全く同じ質問。
皆暇だから甲板に出てきたな。
「イゾウと×××を見てるんだよい。」
マルコが答えると、ジョズとビスタが視線の先を見詰めた。
「仲がいいじゃないか。」
ビスタが笑いながら言うので、俺も返事をした。
「な。×××がどんどん打ち解けてくるのはいいよな。」
「そうだな。最初はやっぱり緊張してたしな。」
「そりゃこんだけむさ苦しい男だらけの集団に入ったらそうだろい。」
皆×××がこの船に馴染んでくるのを喜んでいた。
退屈な船生活の中で、笑顔は多ければ多い程いい。
四人で温かい気持ちでイゾウと×××を眺めていたが、突然×××の様子が変った。
? どした?
顔を俯けて目を押さえるようにしてる。
イゾウが×××の腕を摘み目から無理矢理剥したら、×××はもう片方の腕を目にやろうとしたが
それもイゾウに掴まれ両腕を拘束された。
×××が涙を流しながら暴れようとしてるのをイゾウが宥めて大人しくなり、×××の顔がイゾウの両手で包み上げられて顔を上にさせて。
震える×××の手が、イゾウの着物を掴んでる。
あららららららら………
多分目にゴミでも入ったんだろうと思うけど……いやこれいいの?
皆を見ると皆も何とも言えない表情をしていた。
「…いいのか? マルコ。」
「俺に聞くなよい、ジョズ。二人は何もしてねえじゃねえか。」
「いやしかし。ヤバいのではないか?」
「ビスタの言う通りだぜ。どーすんの。」
「知るかよい!」
そんな俺等の心配を余所に、イゾウは×××の目のゴミを取ってあげてたが、これまた一々色気のある行動だな、おい!
×××の目の事を考えて、乾いた指より濡れた指の方が良かろうと指を舐めたんだろうけど。
多分今頃×××の心は悶絶もんだろう。…面白いかも。ぷぷ。
「取れたみたいだよい。」
×××の顔に笑顔が戻り、イゾウが着物の袖を使い涙を拭いてあげてた。
そして見詰め合う二人。
「「「「………………。」」」」
×××の顔が真っ赤になってる。
「お出ましだな。」
ビスタの台詞を聞かずとも視界に燃え盛る人物が目に入り、何てお約束!と笑ってしまった。
「おーおー。よく燃えてるぜ。」
「×××も苦労症だな。」
「イゾウが煽ってるようだが?」
「暇だからな。楽しませてもらおうじゃねえか。」
マルコがにやりと笑った。珍しい。
普段だったら咎めたり怒ったりするが、ここ最近敵襲もなくて暇だったし娯楽が欲しいのだろう。
「いいね。ソレ。」
俺も笑うと、ジョズやビスタも賛成みたいで二人ともにやりと笑った。
回りも見渡すと、他にも俺達に賛同してくれる奴等がいたので、お互いニッと笑い返して意思確認完了。
皆で様子を楽しんで見てると、×××の肩に腕を乗せて体重をかけながらイゾウがエースを煽り、煽られたエースと×××の言い合いがあって。
エースがどんどん燃え出した。
イゾウは心底楽しんでエースを煽ってる。
×××を抱き上げて頬を摺り寄せた時なんて、もう俺等の方まで気温が上がったのが解った位だ。
エースも単純過ぎるけど、イゾウ…お前ちょっと悪ノリし過ぎな気が…
まあそれだけイゾウも×××を気に入っているんだろうな。
「それもいやだねえ。」
そう言ってイゾウが×××を抱いて高く飛び、エースの火銃が二人を追いかけ
「エースの馬鹿ーーーーっっ!!!!!!」
という×××の叫び声をスタートに俺等もバトルに参加を始めた。
逃げる二人に追い着くように進路を読みながら様子を見ると、飛んでくる火やエースの攻撃から逃げながら
×××を抱く体勢を変え、片手を自由にしたイゾウがエースに銃を向け容赦なく撃ってる。
多分イゾウ特製の弾頭に海水を染み込ませたもので、威力としてはゴム弾程度で一般人には大した事ないが、能力者限定で威力を発すものだ。
お前そんなもんここで使うのかよ! 容赦ねえな!
エースも何とかかわしてるけど、余計苛付き始めたわ。あーあー。
×××を放せー!って怒鳴り散らしている。
「イゾウ! こっちだ!」
俺の掛け声にイゾウが気付いて、×××に優しく謝った後に(ここがまたイゾウらしくてニクイ)、俺に×××を投げてきた。
きゃああああああ
と叫び声を上げて飛んでくる×××をキャッチする。
「サッチ! ちょ、エース止めてよ!」
「んー、止めたいけど、すっげえ怒ってるからなあ。」
「もうー!!面倒臭いー! 早く何とかしてえええええええええ!!!!!!!」
後半×××の声がおかしくなったのは、俺がエースの蹴りを避けて態勢を崩したからだ。
イゾウを締めるより、とにかく先に×××を手元に戻したいエースはいい感じに俺を追いかけてきた。
「私もいるのにー!!! エースの大馬鹿ーーーー!!!」
「×××、それじゃ余計エース怒っちまうんじゃないの?」
「知らない!」
そう言うと×××が俺にしがみ付いて。
俺等を追い掛けていたエースに向かってばーかばーかと連呼して、エースを煽り出した。
×××に抱き付かれて気持ちいいが、これじゃ俺の命が危ねえ!
サッチー!!×××寄越せーーーっ!!!!!って、エースの怒鳴り声が間近で聞こえてきた!
やべええ!
するとガンッ!!って音がして
「エース!! 油断は禁物だぜえ!」
ラクヨウが横からエースに襲い掛かって、足を止めてくれた!
サンキューラクヨウ!!! 今のうちだ!
「マルコ!! パス!!」
そう言って、十メートル位斜め前に先回りしていたマルコに×××を投げると
あああああああああ
って、×××が色気のない叫び声を出していた。
受取ったマルコが笑っている。
「てめえら邪魔だああああ!!!!」
後ろでエースが雄叫びをあげ相手をしてたラクヨウの攻撃をかわして、また×××を追い始めた。
マルコがニヤリと笑って×××を抱えてダッシュし始める。
その後も×××が渡されるのを皆楽しんで受け取って、モビーを傷付けないよう気を付けながら皆でエースを遊んでやったのだった。
×××には悪いけど、たまには身体を動かさないと鈍っちまうからな!
動いた後は宴に突入したけど、ちゃんと仲直りしたエースと×××が二人でオヤジの元で楽しそうに談笑して呑んでるのを肴に
皆でどんちゃん騒いだのだった。
お題:jubilee
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