アガペー至上主義 



まだ白ひげに来てそんなに経ってない頃?設定。



宴が始まり、暫くしてまったりとなり誰かしらとなく宴会芸をする事になった。

各々が持ち芸を出してるとそのうち野郎達が、×××何かしてくれよー、と甘え始めて。
きっと歌か踊りか何かしてくれって意味だと思って、俺も少し期待を込めて×××におねだりしたら。

「んー。ちょっと待って。なんかあったっけ?」

酒が入り、ほんのりと頬を染めて少し考える姿が可愛い。

「あ! あった! でも羽織りもの…。お、いた! ねえ、エース。」

「なんだ?」

「羽織りもの要るから、彼にお願い出来ないかな?」

「ん?」

×××が見つめている先にはイゾウがいた。
イゾウも俺等の視線に気付いて、ん?と顔をしてる。

「何すんだ?」

「ちょっとまだ秘密。でも絶対ウケてくれるって!! でも羽織りもの、着物みたいなのが必要なの。お願い。」

「解った。じゃ、聞いてみっか。」

おい、イゾウ!、と声を掛けてこっちに呼び×××の願いを言うと、ああ、構わないよ、と言われて喜ぶ×××。

「あ、でももしかして汚しちゃうかも… どうしよう、やっぱり、」

「構わないさ。何か楽しませてくれる為に使うんだろ? 俺も×××の芸が見たい。」

「ありがとう! イゾウさん!」

「"さん"はいらないよ。×××?」

「…イゾウ、」

微笑んでイゾウに返事をする×××。

ちょっと待てえ!
何人を置いといて勝手に仲良くなってんだ!!

「おい、イゾウ! さっさと羽織りもの持ってこいよ!」

間に入り込むも、

「エース。」

め!って子供を叱るように×××に手を握られて、それだけでぐっとくる情けない俺。
強気な俺は何処に行った。
そんな俺を尻目にイゾウが己の着物を持ちながら

「腰に巻いてるやつでもいいかい?」

と言うと、元気よく、はい!、と×××が返事をした。



イゾウから着物を受け取った×××がそれを羽織る。

これから踊りでもすんのか?

ワクワクしながら眺めていると、突然

「サッチ! 来て!!」

と×××がサッチを呼び出した。
オヤジの近くでマルコと宴会芸が始まるのを待っていたサッチが、え? 俺?、と立ち上がってこっちにやってくる。

「どしたの?」

「ね、サッチ。耳貸して。」

とサッチにくっつきヒソヒソと内緒話を始める×××。
おい。近えぞ。

「んー、覚えてるけどー、あ! あれすんの?! って相手俺?!!」

「いいじゃん! 協力してよ!!」

「いいけど…別にエースでいんじゃね?」

「だって顔ぐちゃぐちゃになるかもしれないし。」

「俺ならいいっての?! 酷えな!」

「いやそーとは言わないんだけど… サッチなら絶対許してくれるじゃん。」

「まあな。…ってあんま嬉しくないんだけど。」

二人の会話に自分の名前も出た事だし、×××が何をしようとしてるのか解らなくなって声をかける。

「なあ。×××、一体何しようとしてんだ?」

するとサッチをちろり、と見上げた後に×××が

「二人羽織。」

と言った。


※ににん‐ばおり【二人羽織】 袖に手を通さずに羽織を着た人の後ろから、もう一人が羽織の中に入って袖に手を通し、前の人に物を食べさせたりする芸。―コトバンクより



簡単に説明を受けた後に、何故サッチなんだ! 俺が相手する!と訴えると、えー、と×××に渋顔される。

「だってエースの顔がぐしゃぐしゃになるかもしれないし。」

「いいぜ、別に。」

そんな気を使うなよ!

「それを私だけが見れないってのもちょっと悔しいし。」

「…おい。」

もしかしてそっちの方が嫌なのかよ!

「で、俺の顔ならいいってのも酷くね?」

少し呆れた顔で×××を見下ろすサッチに、彼女が奴の服の袖を掴みながら笑って甘える。

「ごめんって、サッチ。だってエース以外に抱きつきやすいのってサッチだもん。」

「エース。俺を睨むな。俺は何もしてねえ。」

×××の言動を見た瞬間サッチに視線を向けたら、慣れた感じで嫉妬をかわされた。
すぐ側で様子を伺っているイゾウがプッ、と吹き出したのも目に入る。
ちっ。
どいつもこいつも気にいらねえ。

「まあでも楽しそうじゃねえか。いいぜ、協力する!」

「ありがとう! 流石だね、サッチ!!」

ニカッと笑うサッチに嬉しそうな表情を返す×××。

「いや何言ってんだ。俺が相手するに決まってんじゃねえか。」

負けまい、と×××が何と言おうと二人羽織の相手に立候補する。

「エース。×××は俺をご指名なんだが?」

ワザと俺を揶揄って煽るようにサッチが笑ったから

「何言ってんだ。気の迷いに決まってんだろ。」

煽り返す。
それを見た×××がうーん、と少し悩み。

「じゃあ二人でしたら?」

「「何でだよ!!」」

声がハモってしまった。
それに合わせてまたププッ!と吹き出して笑ったイゾウが憎たらしい。

「ああ、悪い。お前さん達そんなに楽しみたいなら、着物はまだ提供するからもう一組ペア作って対戦すればいいじゃないか。」

「対戦?」

「そう、もう一人…マルコ! こっちに来いよ! …呼んだからこれで二組出来上がりだから、エースもサッチも×××もいいだろ?」

「そっか!」

「そっかじゃねえ!!」

「何言ってんの、お前?!」

「なんだよい。」

三人それぞれに違う台詞を吐いて、ついでに呼ばれたマルコもやって来て。
結局イゾウからもう一枚着物を借りて、サッチ+マルコVS俺+×××のチーム編成で二人羽織をする事になった。


ネタ内容を聞いたイゾウが急遽試合内容を設定して、宴会係のラクヨウにその場を仕切らせる。
ああ、奴こんなの大好きだんもんな…

「赤コーナー、火拳のエースと後ろは×××〜!! ×××小っっせえ!! 大丈夫か!エース!!」

×××が俺より小さい為後ろからピョコピョコと手が出るだけだから、下に降ろしてる手を×××の足に回しておんぶする形に持ち上げる。

「あんがと、エース! あー、エース温かーい!!」

むっちりと背中全体に×××の身体があたってこっちも温けえ。
ほんわかする。
肩越しに×××の腕が回されて抱きつく形になり、思わず顔が緩んでしまった。

「おおっと! 早速このチームはいちゃついて彼女のいない一人者を煽ってやがる!! 畜生エースてめえ地獄に堕ちろ!!」

「うるせえラクヨウ! 悔しいならさっさと女作りやがれ!!」

「この野郎簡単に言いやがって!! エースてめえマジ鬼か!!!」

久しく彼女がいないラクヨウから厳しいツッコミが入り、後ろの×××はケタケタ笑っているが、寂しい野郎共からも野次が飛んできて。
うおおおーーエース隊長マジ酷え! 負けちまえーー!!とか消えろとか消滅しろとまで涙声交じりで聞こえてきた。
…お前等早く女作れよ…

「対するは青コーナー! 闘うシェフのサッチ!! こっちの後ろはマルコだー!!」

「おおおおお!!!! 負けねえぜー!!!」

サッチが一人で吼える。
マルコの腕は下がったままでやる気なさそうだ。

「お前等男同士で寒いな。」

「おい! てめえ今エースに地獄に堕ちろとかツッこんでおきながら、野郎同士にはそれかよ!! っ!ってえ! マルコてめえ蹴るな!!」

無理矢理参加させられたマルコが、サッチの後ろから膝蹴りを食らわしてる。
確かに強制参加させられた挙句にあんな事言われたらなあ…
でもオヤジは滅茶苦茶楽しそうに笑ってるんだが。いやオヤジ以外も皆笑顔だらけだ。

「それでは始めるぜー! じゃあ手始めに早食い競争から!!」

「ちょっと待て!! それ圧倒的にウチが不利じゃねーか!」

「そうだと思って食べ物にハンデ与えたから頑張れよ、サッチ! エースチームはラーメンでサッチチームはケーキだ!!」

ラーメンて!!!

「馬鹿野郎ラクヨウ! てめえ後で覚えてろ!!」

「聞こえねーな、エース!! じゃ行くぞ! レディ…GO!!!」

テーブルの上に用意されたラーメンをまず探すとこから始まる。
×××は俺の腋下から腕を伸ばしてパタパタ手探り状態なのを、左、右、と指示している間にサッチ達はとっくに
ケーキを鷲掴みにして顔面でそれを受け留めていた。

「マルコ!!! てめえ口の位置を確認n…!!!」

言ってる途中から容赦なくケーキを顔に叩き込まれ生クリームを塗りたくられるサッチ。
周りからは爆笑をもらっていて一歩リードされた感じだ。
マルコお前何だかんだ言って楽しんでるだろ…

「エース、いい?」

小さな声で×××が様子を伺ってきたから慌てて前を向くと、目の前にラーメン丼が。

え?

「エースならこのまま口からイケるよね? 口開いてー!!」

「ちょ、まt…うわっちゃあああああああああ!!!!!!!!!!!!」

あちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!

「ちょっと! エースあっつい!!!!! 暴れないでよ、ラーメン零しちゃったじゃん!!」

「阿呆か×××!! お前俺が火の能力者だからって生身の人間なの忘れてんじゃねえ!! 火傷したぞおい!!!」

ラーメン丼をまだ必死に持ちながら×××がバランスを取ろうとして、後ろから足をしっかり回して俺の腰に抱きつく。
馬鹿! それだとまたラーメン零れた時にお前にも濡れるじゃねーか!!

そう言葉に出す前に、何とかフォークを持った(箸は危ないからフォークになった)×××が、丼内をぐるぐると回して麺を絡ませていたから

「×××、それをそのまま上に上げて!」

と指示して、首を延ばしてそれを口に何とか入れて食う。

「よし! この調子で食うぞ!!」

うん!って声が後ろから聞こえて、×××がフォークを麺に絡ませようと腕を回し始めた時にラクヨウの声が響いた。

「しゅーーーりょーーーーーう!! この勝負、サッチの勝ちだー!!」

「!な、!っぶはははははははははは!!!!!!! サッチ、ずりい、ぞははははは!!!!!」

「うるせえエース!! 笑うんじゃねえよ!!! マルコてめえ後で絶対覚えてろ!!!」

先刻より更に酷い状態になって、顔面生クリームだらけでぐちゃぐちゃにデコられたサッチに爆笑する。
お前それ食べてなく顔に塗り潰してケーキを消化しただけじゃねーか!!!!

勝敗には納得いかないけどこれはウケを取った方が勝ちなのか、誰もが爆笑してオヤジも笑いすぎて苦しそうだ。
私も見たいーっ!!って×××が騒ぎ、頭を着物から出して俺の肩に乗せると

「うっはははははっはははははっは!!!! サッチ最高!!!!」

と俺に抱きつきながら爆笑して。

「うるせえ×××! 元はと言えばお前のお望みのヨゴレだろうが!!」

ってサッチに怒られても平然と笑い続けて、俺に言った。

「ね? だからエースの顔がぐしゃぐしゃになるからって私が避けたの解った?」

「でもその顔もちょっと見たかったんだろ?」

少し意地悪く言うと、いやそれは否定しないけどー、とごにょごにょと言いながらも

「ラーメンで火傷もさせてごめんね。」

と謝ってきたから大丈夫だ、気にすんな、と返事を返して。
額に軽くキスをする。
外野が騒いだけど気にするもんか。

「あれで俺等も多少は笑いが取れたからいんじゃね?」

と言うと、あれ?、この勝負って笑いが取れた方が勝ちなの?と×××が不思議そうな顔をした。

「ラクヨウが仕切ってて判定人みたいだからなー…。俺等も頑張るか!」

「おーーーう!!!」



その間に濡れタオルで顔を拭いて多少まともになったサッチが復活して、第二回戦へ準備が始まった。


早食いの時とは違い、お互いを見据える形で対面に座らされて。
マルコは右手だけに、×××は両手に(僅かながらのハンデを貰った)ピコピコハンマー。
俺とサッチの頭には紙風船がカチューシャに括り付けられて装着されていた。


「おい。」

「それじゃあ第二回戦始めるぜー!!!」

「おい、ラクヨウ! こりゃ何だ!!」

「紙風船割りに決まってるじゃねーか。」

「そんなん見りゃ解る! 何だこのだっせえカッコは!って言ってんの!!」

「そうか? 二人ともイイ男だぜ?」

ニヤリといやーな顔をされる。
俺とサッチの訴えなんか屁ともせず、ラクヨウ絶対楽しんでやがる…
×××はちょ、私も見たいー!!と後ろで騒いでる。

サッチとお互い見合って、生温かい目で視線を交わした。

頭の天辺に紙風船を付けてイイ男、ね…
それにこんなパーティグッズがすぐ揃うなんて白ひげ海賊団どんだけ、だ。
恐るべし。


船上を見渡すと周りは相変わらず爆笑モードだ。
畜生、こうなりゃとことん突っ走ってやる!!

「×××、行くぞ! サッチの紙風船無理なら顔狙え!! リーゼントなんて圧し折っていいからな!」

「了解!!」

ピコピコハンマーを持つ両手を高く掲げてうおー!!、と×××が吼えるとどっとまた笑いが起こった。
それにすかさずツっコむサッチ。

「お前等何言ってんの?! ×××、素直に返事すんな!! マルコ、エースの風船より顔狙えよ!!」

「はいはい。解ったよい。」

マルコのやる気なさげな返事とは別に、ピコピコハンマーを持つその右手は何か楽しそうだ。

「じゃあ用意いいな? いくぜ?! レディー…GO!!!!」

ラクヨウの声と同時に俺の頬に掠めるピコピコハンマー。
あっぶねえ!! 玩具の勢いじゃねえだろ!!

「マルコ! てめえ目見えんのか?!」

「気配だよいって言ってるz…っぶ!!」

×××のピコピコハンマーがサッチの左頬にクリーンヒット。

「×××! 人がまだ喋ってる時に酷えじゃねーか!!」

「声のした方向に思いっきり殴ったー!って、…言ってるぞ!」

マルコも遠慮なく殴ってきたからそれを後ろに避けてかわすと、×××がバランスを崩して倒れそうになったから慌てて抱き直す。
×××は俺に覆い被さるようにしてたのを直して、彼女の足を俺の腰に絡ませて更に彼女の尻を上に支えておんぶする形にした。

「いちゃついてる隙に戴きー! マルコ、そこ真っ直ぐ振り下ろせ!!」

うおっやられる!!
と思ったら×××が左腕でそれをガードして防いだ。
周囲の奴等もおおー!とか感嘆している。
でも続きがよくなく、あっさりと空振りをしてまた皆の笑いを誘って。

「エース! 指示してよ! 解んないじゃん!!」

「すまねえ! そこ、ほら右って違うもっと上!! ああっと危ねえ!!!」

俺も頭を避けたりして大忙しだ。
×××が入ってるしゲームと言うか宴会芸だし、もっと気楽にやればいいんだろうけど
男同士の意地と隊長としてのプライドが立ち、妙に本気モードになっている。
一回戦は負けたし、二回戦は負けらんねえ!

「ぉぶっ!!! ってえ!! 、そこだ! ×××!!」

俺が顔を犠牲にした後に×××が両手を大きく振って左で紙風船を、右でサッチの頭を叩いた。

「勝負ありーーーー!!!! エースチームの勝ちだ!!!!」

ラクヨウの声が響くのと同時に皆の歓声と笑い声が大いに響く。
え、マジ勝ったの?! と後ろでもそもそと×××が頭を出して、サッチを確認する。

「いえーーーい!!! やった! 私すごいじゃん!!!!」

「だな! やったな!!!」

二人でウキウキ楽しんでる所を、サッチもやれやれ、と言った顔で息を吐き。
マルコも後ろから頭を出して、苦笑いしていた。

「負けちまったなあ。」

「いやでも一勝一敗だよい。」

二人がニヤリと笑う。
やっぱり遊びも本気なこの海賊団らしく、二人に闘争心が燃え上がったようだ。

「次で決まるね! 勝つんだから!!」

「だよな。逆転して華麗に勝利だ!」

と俺等も不屈の精神で挑んでると、ラクヨウが楽しそうにやってきた。

「お前等いい勝負するじゃねーか。次の三回戦で決まりな。勝ったらオヤジが何か御褒美くれるってよ。」

え、マジ?!と四人でオヤジを見上げると、オヤジが楽しそうに頷いていた。
おっしゃー!!と気合いが皆に入った。



長くなったので後篇に続きます

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