We Belong Together



〜〜♪


「何の歌だ?」

×××が口ずさみながら甲板で干してた洗濯物を取り込んでいたので、話しかける。

「あら。聴こえてた?」

「歌うの珍しいからな。」

「やだなあ。もう。勝手に聴かないでくれる? 恥ずかしいんだから。」

そう言って笑いながら手に持ってた洗濯物を俺に渡したので、受け取って籠に投げて入れた。

「別に音痴じゃないから、恥ずかしがる事なくね?」

「んー。ありがと。でも照れる。」

確かに照れて頬がちょっと赤くなってる。

「…数年前に流行った曲でね。今日、ナースさん達と恋愛話になって盛り上がって。それで思い出して、ちょっと懐かしくなったの。」

ふふ、と×××が笑う。

「当時、失恋したばっかなのもあって、この曲をよく聴いてたんだ。歌詞を覚えちゃう位ハマって、よく聴いて歌って。
曲に浸って自己陶酔してたのもあるけど、それ位この曲が好きだった。」

極普通にさらりと過去の失恋話を聞かされてしまった。
誰だその×××を振った馬鹿野郎は!!

「エース。嫉妬してるの?」

クスクスと×××が笑う。

「悪いか。」

ふん、と開き直ったら。

×××がそっと右手を伸ばして俺の頬を包み込んだ。

「馬鹿だね。エース。そこで振られてるから、今私がここにいるんじゃない。」

「過去の私がいるから、今の私がいるんだよ。
エースに出会えたのは奇跡かもしれないけど、過去の行いの全てが必然だったかもしれないじゃない?」

優しく微笑む×××。


――――ああ、そうだよな。俺はまた小さい事を気にして。馬鹿みたいだ。


額を重ねて目を閉じた。

「過去に嫉妬してすまねえ。そして失恋してくれててありがとう。」

ぷっ!と×××が噴出した。

「エース、ちょっとそれ酷くない?」

額を離して腕の中に×××を納める。
×××はくすくすと笑い続けてる。

「じゃあ振られてくれててありがとう?」

巫山戯て答えると×××は更に笑顔を零して、もうっ!と俺の胸を軽く叩いた。

彼女の胸に光るピンクダイヤモンドが揺れる。

その胸に光るダイヤモンドが意味する事が、チクリと胸を刺した。
今実際にこの腕に抱いているのに、自分と一緒にいるのに、彼女の胸に存在するそれの意味に、また嫉妬心が擡げてくるのを必死で抑えて。

誤魔化すように×××の額にキスをした。
目を瞑り、微笑んでそれを受け容れてくれる×××。

「さあ、まだ洗濯物あるから降ろしてくれる?」

「ああ。」

抑えて誤魔化した分、何も気付かないでいてくれた×××に安心し。
そのまま甲板にゆっくりと降ろして、残りの洗濯物を取り込んでいくのを手伝い、全部籠に入れた。

「晩飯、今日は海王類を仕留められたから、腕を奮うってサッチが言ってたぞ。」

「やったね!」

×××の方を見ると、夕焼けを背景に鮮やかなオレンジと朱色に染められていて。



、綺麗、だ。――――そして儚い。



そんな俺に気付いて、どしたの?と微笑む×××。

「なんでもない。さあ、中に戻ろうぜ。」

籠を片手に、もう片方の手で×××の手を取り船内に招き入れて、しっかりとドアを閉めた。




この時間、この瞬間は自分だけの×××なのを逃さないように。




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