終わりと新たな物語
「えぇえ!? 未来が獄寺君の義理の妹!?」
「形式上はね。血は繋がってないしほぼ他人なんだけど、隼人の父に拾ってもらって今に至る感じ」
「へ、へぇ……」
「複雑なのな」
次の日そう暴露した未来は、昨日話していた未来と比べて何倍も明るくなっていた。
恐らく慣れない場所で緊張したのだろう、だが今はその緊張も解け、自然な笑みが浮かんでいる。
「住居も決まったし万々歳!」
「え、今までどこで寝泊まりしてたの!?」
「学校の屋上!」
臆せず言う未来に、綱吉はドン引きする。
学校の屋上で寝泊まりしていることについてだけではなく、彼女の変わりようも含めて、だ。
ところで学校の屋上で寝泊まりして今まで風紀委員長に見つからなかったのかということが疑問だが、おそらく運よく見つからなかったのだろう。
この明るさ、これが彼女の普段の様子なのだが、
比較的おとなしめの未来しか見たことのない綱吉にとってはこの変わりようは凄まじかった。
「チッ……」
「そういう隼人は昨日から不機嫌なんだけどねー」
「え、な、なんで?」
にん、と未来は笑みを浮かべる。
そして山本と綱吉の耳元で、こっそりとある情報を流した。
「えぇええ!? み、未来って獄寺君の隣の部屋に住むの!?」
「……兄妹だし一緒の家に住むんじゃねーのか?」
「年頃の女と男だし離れたほうがいいかなっていうか隼人に全力で拒否された」
あはは、と話す未来。
だがまぁ、少なくとも住居不定ではなくなっただけましだろう。
いろいろ書類やそういう問題もあるにはあるが、そこはよく聞くボンゴレクオリティーだ。
「ま、引き続きよろしくお願いしますよ」
「う、うん……」
丁度その時、HRのために教師が教室へと入ってくる。
それを見て生徒たちは自然と席に着き、教室には椅子や机の物音で溢れかえった。
「お前ら、今日は転校生が来るぞ」
その言葉にざわつきが戻る。
それも無理はないだろう。
数日前に未来が来たばかりだというのに、再びもう一人が来るだなんておかしい話だ。
それも、こんな季節外れの時期に。
「……未来、テメェの知り合いか?」
「なんで僕を疑うのさ」
不快気に未来は眉根を寄せる。
だが、その表情も次の瞬間には消え去った。
その女の子の声を、聞いてしまったからには。
「初めまして! 北国 雪と申します。不慣れなことはたくさんあると思いますが、どうかよろしくお願いします!」
可愛らしい、女の子らしい声が響く。
そこらでひそひそと「可愛いな」という声が走る。
だが未来にとってはそれどころではない。
反射的に音を立てて席を立ちあがり、クラス中の注目を集める。
そんな未来は、前に立っている少女に釘付けだった。
そして雪と名乗った少女も、そんな未来を見てあんぐりと口を開けたまま動かなくなった。
「……ヴァリ、アー……」
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