永遠の再会

「お前があの、未来だ……?」
「名前聞いて思いださないとかマジ有り得ない」


陰鬱な表情で頭を抱える未来と、いまだに信じられていないという風に驚きを体いっぱいで表現する獄寺。
二人が今いるのは、校舎裏である。
既に下校時間の為誰もおらず、こんな感じで秘密話をするのにはもってこいだ。


「うっせぇ! 大体ありきたりな名前だろうが! お前の名字も違ぇし!」
「高城はテキトーに考えたんだよ! そっちこそ獄寺って何さ!」


言い争う二人だが、未来の一言に獄寺は言葉を詰まらせる。
そして言いづらそうに、顔を逸らす。
そして何回か口を開閉させた後、やがて言葉を零した。


「……お……おふくろ、の……旧姓だ」
「……!」


きつく眉根を寄せ、深く刻まれた皺。
そんな、辛そうな獄寺を見て未来は失言に気付く。
だが今更どう取り繕おうと、遅いのは分かっていた。


「……今まで、どこにいたの」


せめてものの、と話題を変える。
だが、その話題は未来が一番聞きたいことでもあった。


「……テメェには関係ねぇだろ」
「ある!たとえ血がつながってなくても、妹じゃんか!」
「ッ、」


声を張り上げる未来に、獄寺は息を呑む。
まるでヤケにでもなったかのような未来の言葉と声に、驚いたのだ。


「……なんだよテメェ」
「……義父さんに拾われた僕は、余所者だってことは知ってるよ……」


ぼそりと呟く未来に、獄寺は目を見開く。
だが獄寺が何か言う前に、未来は続けた。


「……それでも、僕に何も言わず、あの屋敷に一人ぼっちにしてくとは思わなかった……!」


くしゃりと歪められた顔。
それは今にも泣きそうに見えた。

それを見て獄寺も、辛そうに顔をゆがめる。
彼とて、いい思い出はない過去だったのだろう。


「……悪ィ」
「……あの後、さ……僕、アンタの後追いかけて、屋敷でてったんだ……」


未来が告げた言葉に、獄寺は顔をあげる。
今まで生家と連絡を絶っていた彼だから、彼が家出をした後どうなったかは見当もついていないのだろう。


「どうせ……義父さんも僕のこと……気にかけてなかったし。 僕には……アンタだけ、だったから……」


きつく握りしめられた拳。
俯いている未来の顔は、今は確認できない。
ただ、声は僅かに震えていた。


「いろいろあって……辛いことも、沢山あって……でも、でもね」


これだけは伝えたい、という風に未来は顔をあげる。
そんな彼女の目尻には、涙が溜まっていた。


「ずっと探してた……アンタのこと……ずっとずっと、探してたんだ……ッ!」


そう未来は悲痛な声をあげながら、獄寺に一歩ずつ近づいていく。
獄寺は目を見開いたまま、言葉を発することはできないでいた。

ようやく未来が獄寺に触れられる距離にまで近づく。
そっと、未来の指が獄寺の腕に触れた。
びくり、と過剰なほど獄寺が震える。

それに気付いているのか気付いていないのか、未来は勢い余って獄寺に抱き着く。
まるでそうでもしていないとまた獄寺が消えてしまうというように、彼女は獄寺にしがみついた。


「…………ッ、会いたかった……」


消え入りそうな声でそう呟く。
その声にはっと獄寺は我に返る。
そして、震える手で未来の髪の毛に触れる。
ゆっくりとその髪を撫でた獄寺も……泣きそうに見えた。

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