リクアダ | ナノ

※学パロ
※女装

「いっけねー! 遅刻遅刻!」
 制服姿のリクは大慌てで朝の街を疾走していた。始業時間まで五分を切っている。運動神経には自信のあるリクだったが、寝坊することはめったになく、そのせいで焦りが大きく足がもつれる。あと慌てすぎて下半身はパジャマのままだったのもあってめちゃくちゃ走りにくかった。
 十字路に差し掛かった時、ちょうど歩いてきた人影とぶつかってしまった。勢いがあったため二人とも転んでしまう。
「うわあっ、悪い!」
「いえ、僕は大丈夫です。おはようございます」
「え、あ、おはようございます……?」
 リクが手を差し伸べる前に、その黒髪の少年は立ち上がる。よく見るとリクと同じ制服を着ている。もちろん下半身までちゃんと制服だが。
「同じ高校か? 遅刻するぞ!」
「大丈夫です。新学期で三十分開始が遅いので」
「……あー! それで目覚まし鳴らなかったのか!」
 リクは頭を抱えた。ついでにパジャマのままの下半身が目に入り、時間もあるので着替えに戻ることにする。少年とはそこで別れ、リクは社宅へと走った。リクは高校生ということになっているが本当は警官であり任務のために潜入しているのだった。
 そして秋の新学期が始まる。担任のケヴィンは転校生がいると告げた。
「じゃあ……入ってきて」
 教室のドアを開け、入ってきたのは朝出会った少年だった。
「おはようございます。僕はADAM。今日からこのクラスに入ります」
「みんな、仲良くしてあげてね」
 転校生だったのか、とリクは頷く。ケヴィンは教室を見渡し、リクを手で示す。
「ADAM。君の席はあそこだよ。そしてリク……」
「え、俺?」
「そうだよ、リク。ADAMが入って、教室がいっぱいになってしまったから、君には隣のクラスに転校してもらうね」
「なんだそれ!?」
 隣のクラスに転校など初めて聞いた話だ。だいたいそれは転校なのか。俺の意思はどうなる。リクは思わず振り返り、上司であり共に潜入しているバリィの指示を仰ぐ。上司は頷いた。おそらく彼はこの話を事前に聞いていたのだろう。仕方なくリクは前に向き直り、ケヴィンに頷きかけた。
「分かりました。イーサン先生のクラスっすよね」
「うん、そうだね」
 リクは荷物をまとめる。鞄を肩に引っ掛け、ADAMとすれ違う。その瞬間ちらりと見えた、裾から覗く彼の足がまるで機械のように見えてぎょっとした。しかし尋ねる時間もなく、皆に挨拶を述べて教室を出る。隣のクラスでも転入の挨拶をして、ホームルームが終わった。
「ちょっと、バリィさん!」
 ホームルームが終わるなりリクは元自分の教室へ急ぐ。
「この話聞いてたんですか!? 俺何をすれば……」
「落ち着け。それと私のことはここではバリ子と呼べと言っただろう」
「あ、すんません。バリ子さん」
 うむ、とバリィは頷く。今回彼は女子高生として潜入していた。ちなみに役作りのためSNSに勤しみ週一でタピオカを飲みルーズソックスを履いている。
「イーサンの動きが怪しい。君の任務は彼の監視だ。何かあったら報告し、間に合わなかったら独断で動け」
「イーサンが……」
 そこへADAMが近付いてきた。バリィは口を閉ざし、身を引く。口を滑らせるな、とリクに目配せをする。
「こんにちは、リク。僕のせいで教室を転校することになってしまって」
「いや、気にしてねえよ」
「それに今朝衝突もしてしまった」
「覚えてたのか。どっちも平気だよ」
「優しいですね。まるでケヴィンのようです」
「知ってるのか?」
 転校生なのに、と首を捻る。ADAMが口を開きかけたところで本鈴が鳴り、慌てて話を切り上げ教室に戻る。新学期はまだ始まったばかりだ!完!!!
20190609


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