無題 | ナノ

※襲い受け

「歯が当たってる」
 不機嫌に言ったトマーシュに髪を掴まれる。そのまま乱暴に喉の奥まで突っ込まれて視界が滲んだ。苦しい。反射で痙攣するように喉の奥が引きつって嘔吐しかけるのを必死で堪える。ショウはただ口を開けているだけで、だからきっとトマーシュの方も大して気持ち良くもないはずだった。実際この行為はだらだら続いていていつ終わるとも分からない。ベッドの上で四つん這いになったきつい体勢のせいで全身痛みがある。それでも彼に媚びる気にはなれなくてひたすらに固まったようになって耐えている。
 ショウの舌と喉にきつく押し付けて、トマーシュは半ば無理やり射精した。喉に絡む粘っこい液体を、吐き出す場所もないので我慢して飲み下す。常ならば後はすぐ追い出されるはずだった。だからベッドから降りようとしたのに腕を掴まれる。
「……なに」
 口の中にはまだ青臭さが残っていて不快だ。トマーシュはいつもの明瞭さを無くして視線を下げ、やがて掴んだままの腕を強く引いてショウをベッドに転がした。
「俺もしてやる」
 呆気にとられていると彼は身を屈めてショウの足の間に頭を埋める。「勃ってる」と彼は心底おかしそうに笑って、それが妙に無邪気に聞こえた。
 積極的だった割に随分長いこと逡巡して、それから恐る恐るという風に舌先が触れた。どうせやるならもっとちゃんと咥えろと思うが表には出さない。さっきと同じように身動きしないままただ受け入れている。先端だけようやく口に含んで舐め始めたのを見下ろして、馬鹿みたいだと思った。
 欲しいものは力尽くででも手に入れなければならないのに。
「……もういいよ」
 なるべく優しくその頭を引き剥がす。きょとんとする彼に口づけた。変な苦味と粘つきがあったがお互いさまだ。
「ね、しようか」
 ささやいて、ベッドに寝かせる。スプリングが酷い音を立てる。トマーシュの目には反発も怯えも欠片もなくてむしろ期待の色さえ見えた。それに応えてなんか絶対にやらないけど。
 唾液で濡らした指を突っ込む。苦しそうな声を口で塞いでやった。きつい中で慎重に慎重に指を動かしていたら、ようやく何かおかしいと気付いて潤んだ瞳がショウを見上げる。
「ぅあ、なんで、」
「痛くない? 平気?」
「……なんで」
 うわごとみたいになんでと繰り返すのが可笑しかった。なんでって、君が望んだからだよ。いつの間にか彼のはまた勃ち上がって先走りを零し始めていて、それも使って指を増やす。三本飲み込む頃にはトマーシュは声も殺せず喘ぎながらほとんど泣きそうになっていた。
「ひっ、ちが、あ」
「大丈夫だよ」
 指を引き抜いて、柔らかくなったそこに性器を押し当てる。少しの抵抗を抜けると中は反対に奥へ引きずり込むような動きがあって、思い切り腰を打ちつけたいのを堪える。緩やかに抜き差ししながら、耳元にささやいた。
「好きだよ」
 求めるもの以外なんだってあげる。今度こそ彼は泣いてしまって、泣きたいのはこっちだと思った。
20180824

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