novel6 | ナノ

※キャラ崩壊気味 
 ※付き合ってる


 部活のない土曜日、旬に呼び出された。彼の家に。
 春頃に一度訪れたことがあって、そのときも大きさに驚いたものだったが、改めて見るとやはり広い。春名は門から玄関までの石の敷かれたアプローチをやや緊張気味に歩いていく。インターホンを鳴らすと、すぐに旬が顔を出した。
「こんにちは。迎えに行かなくてすみません」
「いや、いいって」
 なんとなく、顔を合わせづらい。旬とはここ一週間まともに話をしていない。
 旬は玄関の扉を大きく開き春名を招いた。
「上がってください。僕の部屋は二階です」
「お、おう」
 おじゃましまーす、と家の奥にそっと声をかけ、春名は丸い後頭部を追いかけた。家は広いが埃ひとつ落ちていない。廊下も磨かれてぴかぴかだ。顔とか映りそう。こっそりうつむいて覗き込むと、下を向いているせいでおかしな形に歪んだ自分の顔があって、思わず吹き出しそうになった。こらえたが、緊張はだいぶほぐれた。
「どうぞ」
「おじゃましまっす……うわ、綺麗にしてるな」
「そうですかね。物がないだけですよ」
 彼の部屋に入るのは初めてだ。いつの間にかそんな仲になったんだなと、感慨深い。
 失礼にならない程度に気をつけながら小綺麗な部屋を見回していると、背後でドアが閉まった音がした。旬は春名をローテーブルの前の床に座らせ、自身もその隣に座った。
「それでですね、春名さん。例のテストですけど」
「……はい」
 浮かれた気持ちが一瞬で緊張に戻る。旬とはここ最近まともに話をしていない……顔を合わせればずっと勉強していたから。
 きっかけは科学の時間に毎週行われる小テストだ。ある日春名が取った点数が、十点満点で二点。それがどう漏れたのか旬に伝わり、次の小テストに向けて頑張るという流れになったのだった。そうなると旬は厳しく、部活の前やらバイトにいく前やらに教科書片手に場所を問わずあらわれ演習させられた。それが、今週いっぱいの話。金曜日の昨日行われたテストは。
「……結構、頑張ったんだぜ」
 春名は恐る恐るプリントを差し出す。十点満点で、八点。一問間違い。完璧主義者の旬はきっと満足しないだろう。
 しかし旬は受け取るなりそれを眺めて、にっこりと笑った。
 予想外の反応に春名はむしろ怯えた。が、旬はにこにこしたまま、何を思ったかヘアバンドをした春名の頭を撫でてきた。
「……ジュン……?」
「春名さん、よく頑張りましたね。嬉しいです」
 笑いながら頭を撫で続ける旬に、戸惑いながらも喜びがこみ上げてくる。
「マジで? いいの?」
「悪いことなんてないじゃないですか。いい出来だと思いますよ」
 僕は春名さんが頑張っているところ、ずっと見てましたから。ていうか、頑張らせたんですけど。にこにこしながら答える旬。
 浮かれて甘えるようにもたれかかると、拒みもせずよしよしと頭をたたかれた。
 なんか最近、ジュンとこうして笑うことなんてなかったな。笑いながら見上げると旬の笑顔がある。胸いっぱいにしあわせが広がる。
 なんでこんなに優しいの、春名が尋ねると、春名さんを甘やかしたかったんですよ、寂しかったから、と答えた。
20160214
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