無題 | ナノ

※あんまり幸せじゃない
※レイプまがい
※女体ではない

 体の自由が利かない。意思に反して勝手に動いて、自由になるのは首から上だけだ。どうせなら思考も記憶も奪われてしまえばいっそマシだった。思い切り睨みつけてやるが、リクをプログラムで操っている張本人たるイーサンは、意地悪く口の端を吊り上げてにやにやと二人の様子を観察している。リクと、ADAMを。
 ここがどこなのかは分からない。きっとどこかの研究室だ。狭苦しく殺風景だが清潔感のある真っ白な室内に、同じく真っ白なシーツの敷かれたベッド。そこに、リクの腕はADAMを押し倒している。こんなことなんてしたくない。望んでないのに。
 リクの手は勝手に動いてADAMの脚を持ち上げる。開かれた脚の間には小さな切れ目のような穴が見える。こんなもの以前は無かったはずだ。必要ないのだから。悪趣味な誰かが手を加えたに決まっていて、当然それは傍らの男に違いない。リクはイーサンを睨むが、彼は意に介さない。
「脱げ」
 短く発せられた言葉にリクは抗えない。機械の左手と生身の右手でズボンの金具を外す。ADAMは寝そべったまま首を持ち上げて、リクが下半身を露出していく様子を静かに見守っている。
「見るな……」
「見てろ」
 リクの懇願はイーサンの命令にあっさり上書きされる。下半身だけ裸の間抜けな格好で、機械の脚の間に座る羽目になる。当然陰茎は少しも反応なんかしていない。イーサンはため息をつく。
「面倒だな。勃たせろ」
 抵抗する間もなく命令はリクの回路を瞬時に駆け回る。ついでにADAMにも。生身の右手と機械の両足が同時に剥き出しの下半身へ伸びる。
「ADAM……!?」
「リク……」
 機械の両目に悲しみを湛えて、ADAMは足の裏でリクの性器を擦る。別にそんな趣味はないはずなのにADAMの幼さを残すデザインとぎこちない動きは妙に扇情的だった。急激に心拍数が上がる。あの科学者は心臓にまで手を入れたのだろうか? 体温が上がって触られているところが固くなっていくのを感じる。目を閉じることさえ忘れて食い入るようにADAMを見つめる。「若いねえ」とイーサンは笑った。羞恥で顔まで赤くなる。
「じゃあ挿れろ」
 眼帯の科学者は残酷な命令を何でもないかのように下す。ADAMは仰向けで両足を広げて、まるで本当の恋人を受け入れるかのような姿勢でリクを見上げる。今唾液を飲み込んだのもきっとプログラムだと都合よく自分に言い聞かせながら、リクは操作からなんとかして逃れようとする。それでも上手くいかずにADAMに覆い被さった。脚の間の切れ込みに先端が当たる。信じられないことにそこは潤んでいてつるりとリクを飲み込んでいく。
 中は窮屈で柔らかくて温かくて不規則にうねっては締め付けてきて、正直死ぬほど気持ち良かった。最悪だ。ADAMの無垢な表情と恐ろしく淫猥な動きの落差が余計に興奮を煽る。腰を打ちつける動きが自分の意思なのかそうでないのか、いつの間にか判断がつかなくなっていた。どこかでイーサンが笑った気がした。
 体を操作されて親友を犯しているというのに、リクは確かにそれを楽しんでしまっていた。
 中で出してようやく動きを止めた。引き抜いて荒い呼吸を整える。狭い部屋で呼吸を乱しているのはリクだけだった。頭が冷えていく。
「ADAM……!」
 体は自由に動いた。ADAMに今度は自分の意思で覆い被さる。アンドロイドの顔からは怒りや何かは感じ取れない。
「ADAM……俺……」
「リク。悲しまないで」
 ADAMの手が頬を撫でる。困ったような顔をして、合成音声に慈愛を滲ませて、ADAMはリクを抱きしめる。そうだ、あの時もそうだった、あいつは自分を犠牲にして俺を、あの時っていつだ、ここはいったい、

 ……夢だった。自室の天井を見上げて、リクはゆっくりと全てを理解していく。叫び出しそうだった。最悪なのは誰だ。俺だ。再会を願う親友について見る夢ではなかった。
「最低じゃん……」
 ベッドの上で頭を抱える。ADAMに会いたいのは確かだ。ずっとそのために努力している。彼の守りたかった世界を守ろうともしている。だがADAMを再現する目処は全く立っていない。
 会いたくて仕方なかった。あの懐かしい笑顔で名前を呼ばれたかった。そのせいで見た夢にしてはやや過激だったが。いつか彼と再会した時に胸を張って対面できるように、とりあえずは汚した下着を洗うところから始めなければならなかった。
20180722
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