novel2 | ナノ

※付き合ってる

 ドーナツの箱を大事に抱えて部室に入ってきた春名がぎくりと体をこわばらせた。旬は首を傾げて、それから合点して、空っぽですよ、と空のコーヒーの缶を振った。ようやく春名は息を吐いて、それでもやっぱり大きく迂回して、席に着いた。心なしかいつもより椅子を引いて体を遠ざけている。
「あの、春名さん」
「何?」
「……なんか怒ってます?」
「いや?」
 ならいいんですけど。旬はつぶやいて、手元の楽譜に目を落とした。
 と、春名が立ち上がった。ドーナツの箱を掴んでずんずん旬に近づいてきて、箱を開ける。
「ジュン、ドーナツ食べね?」
「え、いや、今は」
「いいから」
 有無を言わさず春名はクリームの入ったドーナツを取り出して、旬の鼻先に突きつけた。仕方なく口を開けてかじる。ホイップクリームが詰まったドーナツは食べづらく、春名の手からそれを取って、慎重に食べ進めた。
 一つ食べ終えると、春名は笑って頷いた。対照に旬の顔は暗い。甘すぎる。
「どした?」
「甘いです」
「そう。良かった」
「え?」
 春名の顔が旬に迫る。すれすれまで。すれすれを通り過ぎて。
 顔を離して春名は満足げに笑った。
「おいしい」
20151114
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